書き継ぐのは誰か?2018/03/08 23:33

□虚無回廊(小松左京 2011)

 日本SF界のコンピュータ付ブルドーザ、小松左京の最後の大作である。但し、亀が冷たい湖水を対岸を目指して黙々と泳いでいるところで、残念ながら「続く」となっている未完の大作である。
 宇宙の彼方に突如出現した光年単位の規模の超構造物SSを探査する人工実存AEの視点から、宇宙と(多分)人間の未来が描かれる正統ハードSFである。 
 執筆当時の最新の宇宙論、情報工学の成果をテンコ盛りにした、まさに小松宇宙の決定版となるべき作だったが、テーマが意欲的過ぎたのか遂に完結しなかった。
 僕は、大昔の雑誌連載中に時々読んではいたが、途中で休載になったりしたので、全部読んだのは今回が初めてである。
 読後、これは、小松版の「幼年期の終わり」ではないかと感じた。人類の進化と宇宙の進化が一致する究極の人間中心宇宙の小説である。小松の死の直前に起きた東北大震災の影響が未だ生々しい今だから、最後まで読みたかったなあ~
 巻末には、堀晃、山田正紀、谷甲州の三人を集めて大森望が仕切るという豪華な対談が付いていて、大森がしきりと三人に完結編の執筆を勧めるのだが、皆、はいとは言わない。このうえは、小松宇宙観を移植したAI、すなわち小松AEに続きを書いてもらうしかないのである。
 また、宇宙にける知性体との遭遇の描写が具体的かつ映像的なので、どこかで、亀の寒中水泳も含めて、映画にもしてほしいもんだ。
 それにしても、小松さんは、何故、”communicate”を「コンミュ二ケート」と訛って表記するのだろうか?


虚無回廊