贋作者の自伝2018/02/15 01:10

□ピカソになりきった男(ギィ・リブ 2016)
 
 美術専門家に、「もしピカソが生きていたら、彼を雇ったことだろう」と言わせしめた贋作者の自伝。ピカソ、シャガールなどになりきって描いた贋作は、権威ある専門家のお墨付きを得て、今も流通しているらしい。
 フランスの田舎の売春斡旋人の息子として生まれ、ギャングと共に育った絵の上手い子供が贋作者として成功するさまは、まるで悪漢小説のようだ。
 結局は、やりすぎ(粗製乱造)がたたってお縄になったのだが、その後も、映画にルノワールの手の役で出演するなど、なかなか楽しそうな人生だ。
 贋作の腕を磨けば磨くほど、画家としての自分の絵はやせ細るのが切なく、また、フジタの贋作を漢字サインのミスで日本女子に見破られるエピソードがおかしい。


ギィ・リブ


定年のない仕事2018/02/06 23:25

□定年のない、仕事 エキストラ(小代浩人 2004)

 読むと、僕もエキストラに登録して、第2の人生を楽しもうかと、退職小父さんも元気が出る本。
 CM撮影で深キョンと2ショットになる可能性も、限りなく薄いがゼロではない? 
 この本ではないが、あこがれの怪獣映画に、逃げ惑う大勢の人役で出演した怪獣ファンのエキストラが、あまりの嬉しさに、つい口元をほころばせて監督から怒られたという話を思い出した。
 付録で芸能事務所の一覧も載っている。めざせセリフ付きの役ストラ!
 関係ないが、次の本は「虚無回廊」を借りた。先だって展覧会を観た生頼範義がカバー絵だったからだ。巻末の解説(堀晃x山田正紀x谷甲州の豪華座談会)によると、虚無回廊は、小松左京としては、一番売れなかったSFだったらしい。
 もっと関係ないが、本を返しに行った図書館の駐車場に、えらく決まった黄色のコペンがとまっていた。恰好良かった。


エキストラ
黄色のコペン


定年後(楠木 新)2018/02/03 12:15

□定年後 50歳からの生き方、終わり方(楠木 新 2017)

 ポストさらりまんの指南書であり、既に20版である、売れてるのである。
 ポイントは、早めに準備して、好きなことを始めなさい、である。
 特に異存はないけれど、すぐにその通りにしたいとも思えない。なんか、あんまり読んでても元気が出なかった。
 筆者は、京大卒、大手保険会社勤務のサラリーマンだった人で、在職中からMBAを取得する、文筆業への転身を図る、などの準備を進め、60歳定年退職後は、私設研究所を立ち上げ、大学の非常勤講師も務めている、いわば退職成功者である。
 優秀過ぎて、本の内容が自慢話にしか聞こえないのは僕の僻耳か?
 面白かったのは、退職者が集まる図書館での新聞の独り占めをめぐる小競り合いの逸話、「退職小父さんあるある」である。

オタキングとジブリ2018/01/15 19:47

□『風立ちぬ』を語る宮崎駿とスタジオジブリ、その軌跡と未来
                                 (岡田斗司夫、FREEex 2013)

 外向性オタクのパイオニアにして、今や社長であり大学の先生でもあるオタキングこと岡田斗司夫が熱弁する宮崎駿論。ゼロ戦の設計者、堀越二郎を主人公にしたジブリのアニメ「風立ちぬ」の公開に合わせて発表された基本ヨイショなので、一見鋭そうだが、実は甘噛みである。
 さはさりながら、独特の小気味よさは快調で、内容は、一言でいえば、芸術家、技術者の○○至上主義の擁護論である。
 本当に、宮崎駿が「風立ちぬ」で、そんな私小説のような自己表現をやりたがっていたのかは疑問だが、宮崎駿の本質はメカフェチだと、前から僕は思っていたので、結構納得する部分もあった。
 ただ、宮崎駿も含めて、技術が単なるガジェット以上の意味を持つ作品を論ずるのであれば、今や2011年3月11日の出来事は、避けて通ることは出来ない筈なのだが、全く言及がないのが批評としての欠落を感じさせる。

米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか2018/01/06 23:02

□萌えるアメリカ(堀渕清治 2006)

 以前読んだ「オタク・イン・USA-愛と誤解のAnime輸入史(パトリック・マシアス)」を日本側から見たマンガ売り込み奮闘記。
 著者は、日本の漫画をアメリカで出版する事業を立ち上げた企業家で、小学館と集英社が出資する「ビズピクチャーズ」のCEO、「らんま1/2(高橋留美子)」に助けられ、「ポケモン」で大躍進し、今やマンガも含めたアメコミ業界で確固たる地位を築いたマンガ出版社の雄だ。
 興味深いのは、アメリカで売れるマンガは、日本で今売れている漫画だということ、マンガは生ものなのだ!!!
 この本だけ読むと、マンガの将来は順風満帆に思えるが、僕らは、コンテンツのおおもとになっている少年漫画誌の部数が徐々に低迷していることを知っている。少子高齢化の当然の結論なのだが、源泉が先細りなのだ。
 COOL JAPAN 危うし。
 それにしても、スピードレーサー、攻殻機動隊と、マンガ、アニメ起源のハリウッド実写映画は、何故、興行的に大コケが続いているのか、日本コンテンツで映画化が成功したのはゲームからのバイオハザードだけである。
 次にこの壁を突破するのは誰か、興味津々である。


萌えるアメリカ


教授の芸術漫談2017/12/26 18:57

□かたち三昧(高山 宏 2009)

 大学の先生が書いた、形についての蘊蓄大全、芸術漫談としても楽しめる。
 蛇形(S字体)に関する言及多し。
 入手困難な稀覯本から、ウルトラマンのサインが転載されているが貴重。
 形にまつわる本なので、美術が対象であるのだが、著者が英文学者なので夏目漱石の話も結構書いてある。僕は、「吾輩は猫である」の猫が水死ならぬ酔死していたのをこの本で初めて知った。勿論、吾猫を読んではいたが、猫の死因は全く記憶になかったのだ。勉強になった。


かたち三昧
かたち三昧


ワイン・スノッブ入門2017/12/25 01:13

□100語でわかるワイン(ジェラール・マルジョン 2010)

 たとえ居酒屋でワインを頼むときでも、グラスをくゆらせて、何か蘊蓄じみたことを言ってみたいときはあるもんだ。そんなことを思った人のために、有名フレンチ「アラン・デュカス」のシェフ・ソムリエが書いた包括的なワイン入門書。
 ワインを語るために必要な専門用語、100語がエッセイ風に解説されている。
 しかし・・・
 僕は、最初、この100語を、100個の専門用語ではなく、文字通り、100語だけ読めばワインが分る秘伝書のようなものだと期待して頁をめくったのだ。
 100個も専門用語の定義を覚えなければならないのであれば、立派な学術書ではあっても、お手軽な知ったかぶり養成本にはならないのではないか。
 で、とりあえず読んだ。
 100語の中で、一番印象に残った用語解説は、
 ラベル(エチケット):しばしば役にたたない疑わしい内容の記載にあふれている・・・。
 この類を100語覚えなければならないのである。
 スノッブ(知ったかぶり)になるのも楽じゃない!?

イタリアに行ってシェフになった人たち2017/12/14 14:50

□シェフを「つづける」ということ(井川直子、2015年)

 以前に読んだ「イタリアに行ってコックになる(2003年)」の続編。コックになるためにイタリアに行った24人の内、10年後(要するに今)もシェフとして働き続ける15人の姿をドキュメントしたもの。内11人が日本でリストランテ等を開店しており、中にはミシュランの星を取った店まである。そう、イタリアから帰ってきたら、憧れのミシュランの星を日本でも取れる時代になっていたのである。これも時代の変化である。
 彼らへのインタビューは、必然的に、彼らのお店を紹介することになるので、結果的に本書は、シェフの料理への情熱や人柄も含めてお皿を味わいたい人にとって、絶好のガイドブックとなっている。
 僕も、一読して、京都と奈良で開業しているシェフのリストランテにはぜひ行きたいという気持ちになってきた。残念ながら柏には一人も来てくれないのだ。
 なお、本書によれば、新規開店したレストランの90%は、10年以内に廃業するそうなので、本書で紹介されたイタリア帰りのシェフ達は、なかなかタフ揃いでもある。


井川直子


都知事選に出た前衛芸術家2017/12/12 20:10

□ブリキ男(秋山祐徳太子)

 ブリキ男と言っても、オズの魔法使いに出ている訳ではない。でも、都知事選には2回も出ているが当然落ちている、前衛芸術家・パフォーマーの自伝。
 まだ、芸術家が、酔っ払いであったり、左翼であったりしても許された時代の、きままな人生が楽しそうである(少なくとも傍目には)。
 とは言っても食べて行かねばならぬのだが、ブリキの仏像を売っていたとは知らんかった。
 もし、今度、千葉県知事選に出てくれたら投票しよう。
 あと、確かに一緒に温泉には行きたくない男である(読めばわかる)。


ブリキ男


利根運河に河童2017/12/12 18:32

□河童の居る川(つげ忠男)

 何気に、昔のマンガのアンソロジーを見ていたら、面白い発見があった。
 かの「ねじ式」で有名なつげ義春の弟のつげ忠男の漫画も収録されており、題名は、ずばり「河童の居る川」、で、その川というのが、なんと利根運河なのだ。
 そうか、運河駅のそばには、河童が棲んで居るのだ。
 知らんかった!?
 せっかく居るのだから、流山市は、我孫子のウナ吉さんに対抗して、河童をゆるキャラにしたらどうであろうか。
 ちなみに、漫画の中でも、作中の作田さんには河童が見えるらしいが、他の人にも読者にも河童は姿を現さない。


つげ忠男
つげ忠男