西洋絵画のひみつ2024/02/29 17:20

□西洋絵画の秘密(藤原えりみ(著)、いとう瞳(絵)2010)

 西洋絵画の王道の一つである宗教絵画について、聖書やギリシャ神話の絵解きを中心に易しく解説してくれている本。キリスト教絵画の本質が聖書のイラストであるとの指摘は、まさに得たりや応である。


西洋絵画のひみつ


酔いがさめたら、2024/02/24 16:58

□酔いがさめたら、うちに帰ろう。(鴨志田穣 2006)

 戦場カメラマンというよりは、漫画家の西原理恵子の前夫「鴨ちゃん」として有名だった、鴨志田穣の壮絶なアル中闘病日記。フィクションと名打っているが、ほぼほぼ実話であろう。西原も実名で出てくる。
 アル中日記としては漫画家吾妻ひでおの「アル中病棟」が有名であるが、マンガのオブラートが無い分もっと陰惨である。
 本書を刊行した翌年に42歳で逝去、合掌。


酔いがさめたら


タイムスリップ聖徳太子2024/02/18 21:42

□タイムスリップ聖徳太子(鯨 統一郎 2011)

 「タイムスリップ森鴎外(2002)」が面白かったので、そのタイムスリップシリーズの第8作にあたる「タイムスリップ聖徳太子」も読んでみた。言い難いのだが、シリーズのネタが尽きたのか作者が飽きたのか、「タイムスリップ森鴎外」と比べると随分と雑な仕上がりの印象を受けた。
 なぜかアジアの超能力暴君王として君臨する聖徳太子に、教え子を助けんと現世日本から転生した高校教師が戦いを挑むという異世界冒険談になってしまっていて、歴史を逆引きするタイムトラベルものの面白さはほとんど皆無だった。
 ううむ、残念だなあ。


タイムスリップ聖徳太子


老婆は一日にして成らず2024/02/14 18:18

□老婆は一日にして成らず(長縄えい子 2006)

 佐野洋子さんもそうだが、女流画家にはエッセイが上手い人が多い。昨年84歳でなくなられた柏在住の絵本作家、長縄えい子さんもそうだ。
 一度、パレット柏の市民ギャラリーで個展を開かれたときに、姿を拝見したこともあるので親近感も沸く。近所の手賀沼の思い出話は、読んでて嬉しくなってしまう。エッセイにも書いてあるが、長縄さんが「花井山 大洞院」(柏市)に描いた壁画は、今でも自由に拝観できる。
 本書「老婆は一日にして成らず」は好評だったらしく、続編、そのまた続編と、結局「続続続続 さよなら編(2023)」まで書き継がれていった。


大洞院壁画 長縄えい子


タイムスリップ森鴎外2024/02/10 02:41

□タイムスリップ森鴎外(鯨 統一郎 2002)

 大正時代から現代日本にタイムスリップして来た森鴎外が、昭和初期の文人を次々と殺害した(かもしれない)シリアルキラーを、ミニスカ女子高校生とオタク文学少年の力を借りて解き明かすという、文学SFミステリー。
 タイトルにタイムスリップとあるので一応SFにも分類したが、重点は昭和文学史の謎解きであり、森鴎外がなぜ時間旅行できたのかは全くわからないので、そういうのは期待しないように。
 で、結局、あっと驚く意外だが誰もが納得する犯人が炙り出されて大団円なのだ。
 大変読みやすい文体で一気に読ませられた。


タイムスリップ森鴎外


新編ワインという物語2024/02/09 22:50

□新編ワインという物語(大岡 玲 2018)

 「聖書」から「ドン・キホーテ」まで9編のワインにまつわる物語と、その舞台にゆかりのワインを味見したエッセイ集。バッコス(ディオニソス)出自の地ブルガリアのワインは安旨だそうだ、今度試してみよう。




へんな人間図鑑2024/02/05 19:40

□へんな人間図鑑(沢野ひとし 2008)

 「怪しい探検隊」の椎名 誠の著書の挿絵でおなじみの、イラストレーター沢野ひとしが自分が出会った「へんな人間」を網羅収集した本。
 類似の本に中島らもが書いた「中島らものたまらん人々(1987)」があるが、そっちの方が怪人揃いだったような気がする。沢野がいるアート業界より中島のいた広告業界の方がより狂人が多いのであろうか?


へんな人間図鑑


ゴジラとエヴァンゲリオン2024/02/05 19:17

□ゴジラとエヴァンゲリオン(長山靖生 2016)

 ゴジラと言っても「シン・ゴジラ(2016)」、それと「エヴァンゲリオン(1995~)」なので、実質、庵野秀明(監督)論である。僕の読後感では、どちらも戦争の影を引きずっており、戦争(=武器)オタクと反戦論者の同居というアンビバレンツな性格が庵野監督の作家性と言うことになるらしい。
 筆者には、「ゴジラマイナス1.0(2023)」が公開された今の時点で、もう一回ゴジラ論を展開してほしいかな。




Rock Days2024/02/05 18:21

□ROCK DAYS 1964-1974(マイケル・ライドン/秦隆司(訳) 2007)

 音楽ジャーナリストがビートルイズ、ローリングストーンズ、ボブディラン、ジミヘンドリックス、ジャニスジョプリンなど、全盛期のロックスターに密着して取材したデータ原稿を一冊にまとめた本。
 煌めくロックスターたちと葉っぱを回し吸いするなど、昔のロックファンとしては羨ましいとしか思えない記者生活の産物だが、なかでも、ジャニスジョプリンのインタビューとローリングストーンズツアーへの同行記が一番思い入れが深く感じられた。




JAZZで踊って2024/01/31 19:41

□JAZZで踊って 舶来音楽芸能史(瀬川昌久 2023(文庫版))

 おおよそ昭和元年から16年の日米開戦に至るまでの、日本における舶来ポピュラー音楽(主にダンス音楽)の受容と変遷の芸能史。当時フォックストロットと言われたジャズは、ダンスホールの伴奏を中心に活動分野を広げ、タップダンサー(タッパー)と歌手との組み合わせで人気を博したことなど、知らない歴史が面白かった。
 興味深かったのは、実は日本における大衆歌謡の出発点は、ディックミネの歌った「ダイナ」などのJAZZ歌唱であり、元祖歌謡曲ともいうべき「影を慕いて」などの古賀メロディーはその後に流行したこと、そうかJAZZの方が先だったんだ。
 本書に登場するほとんどの歌手、ジャズマンは知らない人たちだが、朝ドラ「ブギウギ」で再び脚光を浴びている笠置シヅ子や淡谷のりこ、トランぺッターの南里文雄など知っている名前もあった。服部良一も日本のガーシュインと讃えられている。
 驚いたのは、昭和3年にはすでに日本初のアマチュア学生ジャズバンド「ラッカサン(Luck & Sun) ジャズバンド」が法政大学に生まれていたこと、このバンド名は、おそらく英語と日本語をかけた一番古い駄洒落じゃなかろうか。
 で結局、昭和16年の日米開戦で、「JAZZで踊って」の時代はあえなくちょん切られ、再開には終戦を待たなければならなかった。
 そういえば今年(2024年)は昭和99年、来年は百年祭だ。

 本の表紙写真は、当時大人気のタッパー中川三郎とベティ稲田を主役にした音楽映画のダンスシーン(昭和11年)、なかなかお洒落である。