美女と野獣2018/02/01 16:00

□唄は素晴らしかった。

 駅前の名画座で昨年一番のヒットだった「美女と野獣」を遅まきながら観た。
 「ハリーポッター」で有名になったエマ・ワトソンがヒロインのベルを美しく演じており、その歌声にも感心した。アニメや実写を問わず、ディズニーのミュージカル映画の集大成のような良い出来上がりだ。
 さて、肝心の「野獣」であるが、なかなか野性的で格好の良い造形なので、逆に、魔法の解けた王子様が単なる間抜け面に見えるのは困ったもんだ。確かに、主役は、王子様ではなく野獣なので、魅力的でないといけないのだが、その分、王子様の印象が薄くなるのである。ベルも野獣のままの方が好きだったと思う。
 とは言っても、例えば野獣をエレファントマンみたいにすると、映像的には、全く違うホラー話になってしまうので仕方がないかもしれない。
 そういう意味で、僕は、映画としては、大昔の貧弱なメーキャップを芸術的香気でカバーしたジャン・コクトー版が未だに一番好きな「美女と野獣」なのだ。

オリエント急行殺人事件2018/01/09 20:19

□久しぶりに映画らしい映画だった

 映画を観る楽しみの一つは、やはり迫力のある大画面であろう。その意味で、おそらく実写とCGを巧みに組み合わせて作られた、大型蒸気の曳く豪華なオリエント急行の爆走は、それだけで極めて魅力的な映像的スペクタクルであった。
 観客もまたポワロとともにこの豪華列車に乗り込み、列車と言う密室内の殺人事件の目撃者となり、雪の中に閉じ込められて、名探偵とともに謎を解き明かすのだ。
 しかし、あまりに有名な原作なので、大半の観客にとって犯人は既に分かっている。そのため、純粋な犯人探しと言うよりは、そのプロセスを時代がかった雰囲気の中で楽しむことになる。
 犯行のすべてが明らかになった後も、「悪い奴は殺しても罪にならないのか?」という本質的に溶けない謎は残るが、観た後の印象は爽やかである。
 最後に、ポアロは、新たな事件に呼ばれてナイルに出発するが、これは、to be continued ということで、多分同じ主役で次回作としてナイル殺人事件を作るんだろうと思う。
 なお、早々にジョニー・ディップ演じる嫌味な金持ちが殺されるが、そのメークが麻生元首相とそっくりなので笑ってしまった。東西どちらでも、悪徳資本家のステロタイプなイメージは同じと言うことか?

IT2017/12/11 00:18

□アイティーじゃないよ、イットだよ(ネタバレ有り)

 1990年に放映されたスティーブン・キング原作のTV特番「IT」のリメイク映画。
 原作が同じなので、当たり前だけど大筋の話はTV版と同じであった。
 ただ、TV版では、最後に蜘蛛の化け物みたいなもんだと明かされるITの正体が、今回の映画では、冒頭からネズミのような歯を持った化け物と映像的に見せてしまうので、これは、前の方が良かったような気がする。
 全体的には、キングらしい、恐怖に満ちた青春映画で、ジェットコースターに乗ったように絶え間なくドキドキさせてくれた。
 しかし、アメリカの家族って、平穏無事な所は本当に少ないんだね。
 ところで、映画を見ると、27年ぶりにリメイクされたのには理由があることが分かるのだ。


IT


ブレードランナー20492017/11/27 17:09

□レプリカントは電影少女の夢を見るか?

 上野のパルコやの上に開店したTOHO CINEMASに行って、「ブレードランナー2049」を見て来た。
 入り口でゴジラが迎えてくれた。嬉しい。
 映画の出来は、ずばり、続編は辛いよ。
 大体、続編で一作目を超えたのは、僕が見た限りでは「リング2」だけだ。一作目で観客を驚かせたアイデアは、2作目では当然の前提になるので、結局、2作目は、一作目の詳細解説版みたいなことになって、センスオブワンダーに欠けるからである。
 本ブレードランナー2作目も、主人公のレプリカントにヴァーチャル恋人(電影少女!?)が居るなど、それなりに新味を出そうと頑張っているのだけれど、反乱できないデザインの筈のレプリカントが反乱するとか、想定外の奇跡が起きていたとか、話を展開させるための設定破りが不自然すぎるので、SF味が逆に薄まっている。
 ところで、悪役の目が白内障にかかった犬みたいで怖いのだが、一種の差別的表現ではないのか、大丈夫か?


上野東宝シネマ


ゴッホ 最後の手紙2017/11/07 23:34

□あのゴッホの絵が動く!?

 一応、ゴッホの自殺?の謎を解くというミステリー仕立てなのだが、筋よりも、あのゴッホの絵が、アニメになってぐるぐると動くのが文句なく楽しい。世界初の油絵アニメーション映画だ。
 約百人の画家がひたすらゴッホのタッチで、油絵をせっせと描いたそうだ。
 個人的には、耳切り事件以降の話なので、ゴーギャンの出番がほとんどないのが残念である。


ゴッホ


WITCH2017/10/03 23:32

□空腹時に見る幻想のような映画

 開拓時代の西部、宗教心が強すぎて村から追い出された一家は、森の端を開拓して自活を試みるが、赤子の失踪をはじめ、次々と不幸が襲い掛かり、遂には・・・。
 ミステリーか、あるいは、スティーブン・キングのようなホラーかと思って観ていたが、結局どちらでもなかった変な話。
 ネタバレになるので、詳しく書けないが、魔女は実在したというお話なんだと思う。
 ツレアイは、飢えで気がおかしくなった一家の見た幻なんじゃないかと宣った。多少気に食わないことがあっても我慢して共同体の中にいないと、悲惨な目に会うという訓話かもしれない。
 なお、ヒロインが少しだけ脱ぐ場面があるが、食べ物に困っている割には太っている。また、黒山羊さんが悪玉にされて可哀想である。


WITCH


セザンヌと過ごした時間2017/09/25 23:19

□快傑ゾラではない。

 快傑ゾラならぬエミール・ゾラとポール・セザンヌの物語。
 幼馴染で青年期までは無二の親友であった2人であるが、貧乏であったゾラは、小説家として成功し、名士となる。一方、いつまでも売れない画家のセザンヌは、金持ちの親からも見放され、生活にも困窮していく。
 成り上がる者と零落する者との間の溝は徐々に深まり、ゾラが創作の苦悩と狂気を主題にした「制作」を出版したことにより、決定的な亀裂が生じて絶交に至る。「制作」では、セザンヌをモデルにしたと思しき画家の主人公は、己が才能に絶望して自殺するのだ。
 僕も「制作」を読んだことがあるが、創作に行き詰った一人の画家の敗北の悲劇と読むこともできるが、逆に、作者であるゾラの意図を超えて、具象絵画を突き詰めた先の抽象絵画の誕生の瞬間を描いた作品であるとも読める。読み方によっては、全く正反対の二つの解釈ができる小説なのだ。
 ともあれ「制作」の中で、セザンヌに擬せられた主人公は、決して好意的には描かれておらず、本人が激怒したのも無理はなかった。
 基本的には、おっさん2人の近親憎悪みたいな映画なので、面白くもなく、楽しくもない。ただ、セザンヌが屋外で制作する場面では、フランスの美しい田舎の風景の中で、モデルの美女が戯れるので、そこだけは映像的に美しい。
 余談であるが、このころ、チューブ入りの油絵具が普及をはじめ、これにより、印象派が始めた屋外での油絵制作が可能になったのだが、タンギー爺さん(!)がチューブ入り絵具をセザンヌに売りつける場面がちゃんと入れてあって、時代考証がしっかりしているのに感心した。


セザンヌと私


アニメの世界浸透と拡散2017/09/02 23:10

□オタク・イン・USA-愛と誤解のAnime輸入史
                         (パトリック・マシアス著、町山智浩編・訳)

 カリフォルニア州に生まれ、怪獣とアニメにあこがれた末に東京に在住しているアメリカ人のアニメ考を、東京で生まれ、カリフォルニアに住んでいる日本人が編集・翻訳した、オタクによるオタクのためのオタク史本(住所はいずれも2006年出版時)。
 Anime輸入史とあるが、原作マンガや怪獣映画・特撮ヒーローも扱われており、アメリカにおける日本のポップカルチャーの浸透と拡散の記録となっている。日本側から見れば、アメリカのオタク(NERD、GEEK)コミュニティを突破口にしたクールジャパンの売り込みの歴史とも言える。アニメではないが、失敗に終わった「ピンクレディー」のアメリカ進出も、この流れの中で紹介されている。
 扱われているのは、アトムよりもう少し後の時代、ガンダム、セーラームーン、うる星やつら、攻殻機動隊辺りまでだが、宮崎駿やポケモンなどのメジャーな題材は、さらりと流され、「やおい」マンガの米国上陸などが、オタク的に書き込んであるのが面白い。但し、宮崎アニメのオスカー受賞作を「もののけ姫」としているのは明らかな事実誤認(正しくは「千と千尋の神隠し」)で、著者のオタク力にやや疑問が生じる。
 小池一夫・小島剛夕の「子連れ狼」がマーベルコミックに与えた影響分析などは、日本人では気づきにくい視点として面白かった。高千穂遥の「ダーティ・ペア」もアメリマンガ(アメリカ版マンガ)になり、独自の進化を遂げたようである。
 本書を読むと、今やほとんどの日本のアニメ・漫画・劇画は、米国進出を果たしたように思えるが、何故か、かの過激なレディースコミックについての言及はなかった。著者の趣味に合わなかったのか、あるいは現在、上陸中なのか・・・。
 表紙見開口絵のアニメ・コンベンションに集う全米のコスプレイヤーの写真は、ある種天国のような悪夢のような・・・・それだけでも一見の価値あり。
 OTAKU UNITE!

JAZZ中学生「セッション」?2017/09/01 19:13

□御大のお怒りはご尤もの声高しなれど・・・

 著名なトランぺッター日野皓正氏と小・中学生との共演JAZZイベントで、指揮に従わず、えんえんとドラムソロを続けた中学生を、日野氏がびんた(のように見える動き)で止めさせたというニュースが、週刊文春の記事を契機に、TVでも流された。
 中学生は、最初、スティックを取り上げられ制止されても、なお素手でスネアを叩き続けたというのだから、御大のお怒りはご尤もだが、教育委員会主催のイベントでの体罰?はやはりまずかったようだ。
 僕は、この話を聞いた瞬間に、その中学生は、きっと映画「セッション」ごっこをしたかっただけなのだと思ったが、堀晃氏のブログにも言及があったので、やはりと、意を強くしたのであった。
 中学生にとっては、映画の世界の洒落は、現実世界にはなかなか通用しないことが、今の内に分かったのは、ある意味、幸せであったと思う。

ロメロ監督逝去2017/07/19 12:40

□ゾンビ(映画)の父の死

 「Night of the Living Dead(1968)」をはじめとするゾンビ映画の開拓者として著名なジョージ・A・ロメロ監督が7月16日に、肺がんで亡くなっていた。享年77才、日本では喜寿の年である。
 合掌。
 ロメロ監督は、報道では「ゾンビ映画の父」と紹介されていた。
 すると、母は誰なんだろう?


東北道SA
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