ウルフウォーカー2021/02/04 22:48

□Wolf Walkers(トム・ムーア監督 2020)

 狼に跨り髪を振り乱して疾走する少女のアニメとくれば何を連想するであろうか?
 当然「もののけ姫(1997)」である。
 この、絵本のように綺麗な森の中で展開する、少女と狼と邪悪な文明のドラマは、チラシによればケルト伝説に基づいたものであるが、僕にとっては、明らかに宮崎勲アニメに影響を受けたジブリの子である。
 なので、同じように、とても、美しく、そしてほろ苦い。
 最近のニュースによると、本作も、かの大ヒット「鬼滅の刃」などとともに、2021年のアカデミー賞長編アニメ部門にエントリーされている。


Wolfwalker


真夏の夜のJAZZ2021/01/10 22:52

□真夏の夜のJAZZ 4K(監督:バート・スターン 1959)

 1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルの記録、ときおり同時に開催されたヨットレース(アメリカンカップ)の映像が入る。50年代の人気ジャズマン(含むジャズウーマン)ほとんど総出演の豪華絢爛音楽映画。
 リマスターだか、リミックスだか、良く知らんが、最新現代の映像・音響技術で60年以上昔の記録映画が鮮やかに蘇った。
 当時の前衛、セロニアス・モンクの不協和音なピアノから始まり、絶頂期にして既に伝説となっていたアームストロングの歌とトランペットが続く。ジャズからはみ出してロックを作った男、チャック・ベリーの軽快なリフがそれに重なり、最後は、マヘリア・ジャクソンの圧巻のゴスペルで〆。
 いやあ、本当に、現場で聞きたかったなあ。


真夏の夜のJAZZ


鬼滅の刃2020/12/13 23:10

□ピアスを付けた桃太郎の鬼退治

 遅まきながら大評判のアニメ「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」を観てきた。歳をとってもミーハーだから、流行り物は気になるのだ。ディズニーアニメの公開延期などでライバルがいないせいか、興行はすこぶる好調で「千と千尋の神隠し」の約三百億円を抜く勢いだという。
 僕も、千と千尋を質的に凌駕するとまでは思わなかったが、丁重に描かれライティングに凝った背景や、機関車などの3DCGとセル画風の2D作画を違和感なく融合した動きのある画面に感心し、文字通り猪突猛進的に進む鬼と少年剣士とのバトルを充分に楽しんだ。
 物語としては、大正に蘇った「桃太郎」の鬼退治である。昔話、つまりある種の原型の物語なので、面白くて力強い。しかし、桃太郎には、戦意高揚に利用された過去があり、その意味では、主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう 難しい漢字だ。)の耳飾りの日輪文様から旧日本軍を連想して拒絶反応を示した、韓国の一部の見方は、あながち全く根拠のない誤解とは言い切れないものがある。ちなみに、僕の覚える限りでは、耳にピアスをした少年漫画の主人公は炭治郎が最初ではないか。
 ただし、桃太郎は鬼を退治して財宝を得たが、鬼殺隊の少年剣士たちは、ほぼ無敵の鬼たちに哀れにも殺され続ける。偶然か必然か、今の時期での公開で、鬼たちは、近代文明が切り捨てた森に棲むなにものかの復讐を体現するものとして、コロナ禍のメタファーにもなっており、これも大ヒットの一因と思う。
 時代背景を大正にしたのも絶妙だと思う。江戸時代では古すぎて、感情移入がし難いし、時代考証も大変だ。昭和では、新しすぎて、鬼相手のチャンバラはさすがにリアリティがなくなる、よしんば鬼が出て来ても軍隊の出番となるであろう。明治では、列車のような近代的なガジェットは出し難い。鬼の棲まう古代と観客のいる現代をつなぐ時代として大正を選んだのは誠に秀逸である。
 惜しむらくは、折角の魅力的な時代設定なのだから、明治を抜けて仮初めの大正デモクラシーを謳歌する市井の人々、街の賑わいなどをもっと画面に入れてほしかった。
 次回作に期待しろということか?


鬼滅の刃


パラサイト2020/07/21 17:32

□パラサイト 半地下の家族(ポン・ジュノ監督 2019 韓国映画)

 世界のクロサワも獲れなかったアカデミー賞作品賞を、アジア映画(非英語作品)として初めて受賞した、映画史上に残る韓国映画。監督は、「グエムル 漢江の怪物 2006」で、日本のSFファンにもおなじみのポン・ジュノ。
 冒頭の話の展開は、なんとかして大富豪の家に寄生虫のように入り込もうとする貧困家族の手練手管をコメディタッチで描いていて、日本の「万引き家族」にも似て楽しいのだが、後半に大きなどんでんがあり、陽気さは消え去り、阿鼻叫喚のカタストロフィーになだれ込んでいく。
 僕は、この終わり方は陰惨だと感じたが、批評家はこの映画を絶賛した。テーマの追及におけるこの徹底さが世界に通じる韓国映画の強みなのだろう。ともあれ、2020年のアカデミー賞は、ディズニーとは真逆の世界観の映画が獲ったのである。
 

半地下の家族


Fukushima 502020/03/11 20:05

□あのとき何が起きていたのか。

 3.11東北大震災の時に、福島第一原子力発電所(1F)で起きた、わが国最悪の原子力事故を、渡辺謙など豪華俳優陣で再現したドキュメンタリードラマ。津波により原子炉の冷却に必要な電源を喪失した1Fは、吉田所長(一人だけ実名で登場)以下のスタッフ決死の対応にもかかわらず炉心溶融と水蒸気爆発に至る。
 当時は想像するしかなかった事故時の炉内の挙動、冷却水喪失、炉心溶融、水素の発生と漏洩、そして水素爆発と圧力容器の破損に至る一連の過程が、映画ならではのCGを駆使してリアルに「見える化」されるのを期待したが、イメージ的な画像の範囲を超えていなかった。事故後9年間の過酷事故解析の成果をもっと反映してほしかったが、科学考証スタッフも明示されていない。
 事故への組織的対応についても、首相から原子力安全委員会委員長、東電社長、発電所長にいたるまで、全員が大声で怒鳴りあっているだけにしか見えず、俳優の力演も上滑りしていた。意思決定プロセスが見えてこないのだ。
 最後に、エンドロールに注目したが、協力に東京電力は出ていなかった。映画の中の東電マークも微妙に本物と変えていた。代わりに、復興庁協力が大きく出ていた。文化庁の助成金も得ている。
 再現ドラマとしては、色々残念な点もあるが、あの事故があったということを伝える映画として貴重。


Fukushima50


CATS2020/02/02 23:06

□最も有名なエリオットの作品

 詩人T.S.エリオットの文学的な代表作は、「荒野」であるが、彼の関わった最も有名な作品となると、「CATS」であろう。少なくとも日本では、このミュージカルなくして、英米文学の徒以外に、この詩人の名前を知る者はいなかったであろう。
 さて、その超ロングセラーのCATSが、最新のSFXで実写映画化された。役者の顔以外は、モーションキャプチャーにCGの衣を被せるという、「アバター」で確立された実写とデジタルの融合は、もはや継ぎ目が全く分からないぐらい自然に、この世ならぬ猫女を現出させていた、まさに映像マジック!
 ところで、最後に気球に乗って天に昇った猫は、いったいどうなっちゃうんだろう。
 あの気球もいつかは落ちるんだし・・・


北小金の猫
CATS


フォードvsフェラーリ2020/01/24 20:08

□レースシーンが全て。

 フォードが初めて常勝フェラーリを打ち負かした、1966年のルマン24時間を描いたレース映画。当時は、芸術的に美しいフェラーリに対する、金にものを言わせたフォードの物量作戦の勝利と解されていたが、この映画は、そこにはやはり、人間、レースカーの設計者のシェルビーとドライバーのケン・マイルズが居たと主張する。
 実写とおそらくCGを併用したと思われるレースシーンは、大迫力で、自分でサルト・サーキットを運転しているようなスリルと錯覚を味わえる。
 そこがこの映画の真髄である。
 素晴らしいレース映画として、本国では、アカデミー賞にノミネートされるなど好評だが、日本での人気は、「栄光のル・マン」のスティーブ・マックイーンのような強烈なスターがいないこともあり、今一のようで、柏の葉の映画館には、僕を含め、7人しか客がいなかった、それもオッサンばかり。


Ford GT40s Lemans 24


ロケットマン2020/01/05 20:01

□令和二年、映画の観初めはエルトン・ジョンの伝記だった。

 遅まきながら、エルトン・ジョンの伝記映画「ロケットマン」を駅前の弐番館で観た。前半は、ロックスター誕生の成功談で痛快だが、後半は、カミングアウトと薬物闘病記で湿っぽい。
 歌も俳優が唄っているが、僕はエルトン本人の声の方がよかった。
 エルトン・ジョンのジョンの由来がビートルズのジョン・レノンとは知らなかった。
 日本の芸能界は、薬物所持で即追放だが、向こうは関係ないらしい。


ロケットマン


ルパン三世 THE FIRST2019/12/15 20:02

□これは面白い!

 ルパン三世初の3Dアニメ化、あまり評判の良くなかった実写版の二の舞になるかと思ったが、はるかに面白かった。
 最初こそ、解像度の悪いモーションキャプチャーのような人物のゆらゆらした動きに違和感を覚えたが、見慣れるにつれ、それもグランギニョール的な演出と気にならなくなり、実写さながらの質感の車がアニメならではの奔放な動きで繰り広げるカーチェースなど、3Dのメリットがしっかりと生かした痛快な画面に魅了された。 
 主人公ら、人物の造形も、不気味の谷に落ちることもなく、かといってディズニーのアナ雪のように、お人形路線にいくこともなく、特に銭形警部などは、TVでおなじみの2次元アニメの造形を巧みに3D化しており、日本アニメ独自の3D人物モデルの典型を造り上げたといっても良いであろう。この銭形警部の乗る埼玉県警のパトカーがパリを走り回る場面も素晴らしかった。
 話も、TVアニメ時代から持っていた、007的スパイ活劇と、ピンクパンサー的なドタバタ喜劇の絶妙なバランスのままに、スピーディに展開し飽きさせない。また、ルパンと運命の糸で結ばれていた少女との交流には、宮崎俊監督の「カリオストロの城」へのオマージュを感じた。
 なお、「ルパン三世 THE FIRST」という、直訳すると三世・一世みたいな妙なタイトルにも納得するオチがあった。
 見て損はないと思う、ヒットしてほしいと思う。
 そうすれば、トムとジェリーのような、ルパンと銭形警部の永遠の追いかけっこがまた見られるのだから。


ルパン3世


ボーダー2019/11/16 22:43

□実写版ムーミン!?

 北欧のスティーブン・キングとも言われているヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編に基づくダーク・ファンタジー。
 実に不思議というか、はっきり変な映画だ。ネタバレになってしまうので詳しく書けないが、実写版ムーミンのようなものである。逆にこの映画を見て、何故実写版ムーミンが作られないのかがよく分かった。かなり不気味な代物になるのだ。


ボーダー