神々の遺品2024/07/01 18:04

□神々の遺品(今野 敏 2002(文庫))

 オカルト科学系ライターの殺人事件を、私立探偵が追うSF風味の推理小説、公安、米軍、KGB、それにバチカンのスパイが入り乱れる。惹句に曰く、「宇宙と人類の歴史を紐解く、超伝奇ミステリーの黄金傑作!」。
 日米双方の関係者から謎解きが進み、シュメール文化に遡る米国の極秘計画が炙り出される前半までは快調なのだが、肝心の謎の中身が月刊「ムー」の記事を切り張りしたようなものなので驚きが少ない。ために何故ライターが殺されたかもようわからず、後半はグダグダになって終わったのは残念。
 やはり、「幻魔大戦 平井和正/石森章太郎(1967)」はさすがに面白かった、あるいは、半村良(「産霊山秘録(1973)」)は本当に凄かったのだと、今更ながら思う。


神々の遺品


カーテンコール2024/05/10 23:33

□カーテンコール 25 SHORT STORIES(筒井康隆 2023)

 もはや最後の文豪となりつつある筒井康隆の最新の短編集。
 25編すべて面白いが、しみじみと気になるのは「プレイバック」。
 作者の書いた小説の主人公たちが次々と作者を訪ねてくるのだが、そのうち、星 新一、小松左京、平井和正、半村 良、光瀬龍、広瀬 正、大伴昌司と、故人となったSF仲間も押しかけてくる。その中に何故か存命の豊田有恒も入っていたというオチなのだが、その豊田有恒も本書の刊行後1ヶ月で亡くなっているのだ。
 表紙のとり・みきの装画が嬉しい。


カーテンコール


気まぐれスターダスト2024/05/10 23:18

□気まぐれスターダスト(星 新一 2000)

 日本SF界のパイオニアにして大偉人のショートショートの名手、星 新一の、既刊のアンソロジーよりは転げ落ちた(素晴らしい)星くずを集めた一冊。
 一読して驚いたのは、このころのショートショートは意外と長いこと、文量的には立派な掌編である。処女作と思われる、初出がガリ版刷りの雑誌と書かれた「狐のためいき」が読めるのも嬉しい。なんとなく硬質で理詰めのイメージが強い星新一だが、ドジな狐が独白する本作はとても情緒的である。


星新一
星新一


宇宙舟歌2024/04/28 14:17

□宇宙舟歌(R・A・ラファティ/柳下毅一郎(訳) 2005)

 ほら話SFの大家ラファティの初期長編とあって読んでみたが、昔「SFマガジン」で慣れ親しんだ痛快な馬鹿話とは少し違う、どこかバロウズにも通ずるサイケな叙事詩であった。痕跡はあってなきがごとしであるが、一応ホメロスの「オデッセイア」を下敷きにしているらしい、映画「2001年宇宙の旅」と兄弟みたいなもんかも。


のどぐろの塩焼き


カイロス打上失敗2024/03/13 11:43

□あちゃー😫

 日本初の民間ロケットによる衛星打ち上げとして、「スペースポート紀伊」から今朝発射された「カイロス」だったが、打ち上げ直後に爆発し失敗に終わった。
 下町ロケットはなかなか難しい。
 再発防止策なのだが、まずロケットの名前を変えてはどうかと思う。
 カイロス(Kairos)はチャンスを意味するギリシャ神話の神の名前と言うが、同じ神話に出てくる墜落したイカロス(Ikaros)のアナグラムにも読めて縁起が悪いのでは。


Kairos
            写真:関西テレビ3/13

Oscars for Two2024/03/11 18:05

□快挙二連荘!

 米国アカデミー賞にノミネートされていた日本映画2本がめでたくオスカーを受賞した。視覚効果賞の「ゴジラ-1.0」と長編アニメ映画賞の「君たちはどう生きるか」だ。
 ゴジラは低予算でCGと実写を合成して迫力ある映像を作る技術が、「千と千尋の神隠し」に次ぐ2度目の受賞となった宮崎アニメは、王道の異世界ファンタジーと手書きの2次元作画に拘った日本アニメのスタイルが評価されたようだ。
 何にしろ目出度い話だが、特にゴジラの視覚効果を支えた「白組」は、中心となったCGアーチストをハリウッドに引き抜かれないように気を付けた方が良い。
 午後、福島を思い黙祷。


Godzilla at Kinejun-theater


鳥山明さん2024/03/08 16:28

□さようならDr.スランプ

 アラレちゃん(Dr.スランプ1980~)や悟空(DRAGON BALL1984~)でおなじみの漫画家、鳥山明さんがなくなった。ゲーム「ドラゴンクエスト」のキャラクターも有名だ。
 もともとデザイナーだっただけに、摩訶不思議な人物や魔物やメカの造形に抜群の手腕を発揮して楽しませてくれた。
 享年68歳はいかにも若いが、今秋から始まるDRAGON BALLの新シリーズアニメ(DAIMA)を、天国からの贈り物として楽しみにしよう。
 合掌。

「三体」TV版2024/02/28 13:29

□中華SFドラマ一気見

 世界的なベストセラーになった中華SF「三体」のTV版をWOWOWオンデマンドで一気に(といっても半月くらいかけて)視聴した。科学者の謎の連続自殺から宇宙からの侵略が明らかになるまで、三部作である原作の第一部をほぼ忠実に30話で再現している。長かったがとても面白かった。
 感心したのは、クライマックスのタンカーの場面を別にすると、それほど派手なCG/SFXを使わずに、推理タッチの人間ドラマでSFとしての緊張感を維持した演出、中国の制作陣の水準はハリウッド並みに高い。サブタイトルは"Three-Body"、エンディングの歌も英語であり、明らかに世界市場を意識していた。


三体


タイムスリップ聖徳太子2024/02/18 21:42

□タイムスリップ聖徳太子(鯨 統一郎 2011)

 「タイムスリップ森鴎外(2002)」が面白かったので、そのタイムスリップシリーズの第8作にあたる「タイムスリップ聖徳太子」も読んでみた。言い難いのだが、シリーズのネタが尽きたのか作者が飽きたのか、「タイムスリップ森鴎外」と比べると随分と雑な仕上がりの印象を受けた。
 なぜかアジアの超能力暴君王として君臨する聖徳太子に、教え子を助けんと現世日本から転生した高校教師が戦いを挑むという異世界冒険談になってしまっていて、歴史を逆引きするタイムトラベルものの面白さはほとんど皆無だった。
 ううむ、残念だなあ。


タイムスリップ聖徳太子


H3打ち上げ成功2024/02/18 16:58

□三度目の正直は大成功 !^▽^!

 JAXAは17日、昨年の打ち上げ中止とそれに引き続く打ち上げ失敗を乗り越えて、国産新型ロケットH3の打ち上げ、ならびに模擬衛星と超小型衛星の軌道投入に成功した。
 祝 三度目の正直!


H3成功