アルファンウイ2024/10/06 15:04

□アルファンウイ
  (R・S・フェルロシオ/渡辺マキ(訳)、スズキコージ(絵)2009)原著1951)

 スペインの国民的小説家R・S・フェルロシオの処女作に、日本で挿絵を付けて刊行された幻想小説。剥製師免許を持つ色彩感覚に優れた少年が各地を旅する、訳者の後書きによると「ドン・キホーテの子供時代の物語」。
 概ねのほほんとした主人公だが、一回だけ人形?相手に見せる凶暴さがリアルであった。それも含めて言えば、「裸のランチ」のW.バロウズの子供時代?


アルファンウイ


侍タイムスリッパ-2024/09/27 20:38

□侍タイムスリッパ-(監督等 安田淳一)

 第2の「カメ止め」(「カメラを止めるな!(2017)」と評判がうなぎ登りの低予算SF時代劇「侍タイムスリッパ-」を観て来た。内容はまんまタイトル通り、幕末から現代の時代劇撮影所にタイムスリップしてきた侍の活躍であった。
 大変面白かった。真田広之プロデュース・主演の米国TV大作「将軍」が今年のエミー賞を総なめしたことも時代劇への追い風となって、さらに売れるのではないか。


侍タイムスリッパ-


怪獣保護協会2024/09/07 23:35

□怪獣保護協会(ジョン・スコルジー/内田昌之(訳) 2023)

 その名もKaiju Preservation Society/KPS(Kは怪獣のK!)に拾われた失業中の主人公が、核爆発によって時空を超えて繋がった、もう一つの地球にあるホンダ(本多猪四郎!)基地に送り込まれ、仲間とともに怪獣保護に右往左往する怪獣SF。
 なんとなくイーロン・マスクを思わせる悪役もしっかりと活躍?する。
 円谷プロで(着ぐるみを使って)実写映画化しないかなあ。
 あ、イーロン・マスク繋がりで思い出した。この小説では登場人物がしっかりとマスクを着けていて、これがコロナ時代に書かれたことを刻印している。


怪獣保護協会


ビッグ・クエスチョン2024/09/07 22:35

□ビッグ・クエスチョン 人類の難問に答えよう
                  (スティーブン・ホーキング/青木薫(訳)) 2019)

 おそらく人類最高の頭脳の一人だったホーキング博士(2018年逝去、享年76歳)が死の直前に遺した科学エッセイ集。専門分野の宇宙論、ブラックホールに限らず、ET、AI、人類の宇宙進出などについて、幅広く自分の考えを述べている。
 とても面白かったが、タイムトラベルにはもう少し楽観的であって欲しかった。また、博士が一種の宇宙体験(専用機G-フォースワンによる車椅子搭乗者としては初の無重力体験)をしたことを初めて知った。好奇心の塊だったのだ。
 本書の中で、博士はドナルド・トランプを世界の脅威と考える一方、イーロン・マスクを高く評価している。しかし、今、次期大統領選を前にして、マスクとトランプは手を組んでいる。世の中はM(Membrane)理論に劣らず複雑怪奇だ。


ホーキング博士


物質のすべては光2024/08/14 20:39

□物質のすべては光 ― 現代物理学が明かす、力と質量の起源
                (フランク・ウィルチェック/吉田三知世(訳) 2009)

 さすがに現代物理学の最前線の話だけあって、ポピュラーサイエンスにしてはとても難しかった、正直歯が立たず、分かったような気分にすらなれない。
 我々の体や宇宙を形作っている原子をさらに割っていくと、原子核と電子に行きつく(さらに原子核を割ると陽子と中性子が出てくる)。その重さ(大雑把には質量)を全部足し合わせると世界の重さになる、ここまでは我々世代の中学校の理科の知識。
 しかし、時代は進む、科学も進む。
 今、人類は、陽子と中性子を割ってクオークとグルーオンをはじき出した、しかし、これら素粒子の存在(質量)は単体では耐えられないほど軽いので、単純に足しても我々の体重すら出て来ない、世界も我々もそのままではすかすかなのである。
 どうやら、観測できる世界と出来ない世界の境目で、クオークとグルーオンのエネルギーがこの世の普通の質量に変換されるらしい、その場所を科学者は「グリッド」とか「凝縮体」と呼ぶが、ノーベル賞の筆者はあっさりと「エーテルは不滅だ」とのたまう。中世の錬金術師が空間の本質を見抜いていたのかもしれない?!。(理科の先生が僕のオカルト趣味を矯正するために、マイケルソン・モーリーの実験に関するブルーバックスをくれたことを思い出した。)
 さらに、最新の天文学の観測は、実は我々が知っている普通の物質は、宇宙の質量のなんと5%にしかすぎず残り95%は、何だか分からないダークエネルギーとダークマターで占められている(筈)だと言っている。
 これらの謎は、筆者らが研究する、宇宙は一種の超伝導体であるという統一的な理論によってうまく説明できるかもしれないと説き、その第一歩として、ヨーロッパ素粒子物理学研究所(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC、2008年完成)によって、質量発現の要となるヒッグス粒子が発見されることを予告している。
 というのが、多分相当の誤解を含んだ僕の理解だ。分からなくても知的好奇心が刺激され面白かったのが面白い。ヒッグス粒子も2011年に発見されたらしいので本書に書いてあることは多分本当のことなのだろう。もう少し頭を整理してから、さらに最新の成果を取り込んだ解説本も読んでみよう、と思った。


物質のすべては光


恐竜再び2024/08/10 20:11

□ダイナソータウン柏2024

 ご好評につき(たぶん)ということで、去年に引き続き、駅前アーケードに恐竜のキネティックアートが戻って来た。写実的だった去年の恐竜に比べて、今年はよりデフォルメされ動きもすばやくなって、つまりはより立体アニメになっていた。
 もちろん、子供は大喜び、群がっていた。
 中にはときどき休んでる恐竜もいた。
 係員がいてスタンプラリーのようなこともやっていた。
 来年は、ラクエル・ウェルチ@恐竜百万年も来ないかな?


ダイナソータウン柏
ダイナソータウン柏
ダイナソータウン柏
ダイナソータウン柏
ダイナソータウン柏
ダイナソータウン柏


エイダ2024/07/23 22:23

□エイダ(山田正紀 1998(文庫版))

 感染外来の待合室で読み始め、コロナで自宅に籠りきりの間に一気に読んだ。ネタバレで書くと、大型粒子加速器の実験を量子コンピュータで観測することにより並行世界間にあい路が生じ、主人公たちは確率論的にあっちに行ったりこっちに行ったりしながら複数の結末にたどりつく。
 読む方の頭の中でも話がグルグルと回るが、この量子宇宙へのアクセスがフロッピーディスクというのは、今となってはご愛敬。
 昔流行った、読者の選択(読むこと)によりエンディングが替わるゲームブック(「アニマルタイフーン(1987)」など)に似ている。実はあれも量子論的な試みだったか。
 著者本人を投影したSF作家のほぼ本音の独白が面白い、他の登場人物もSF界にモデルがいると思う。主要な場となる「宇宙船"イマジナリー号"の冒険」は、石原博士の傑作ハードSF「宇宙船オルモロフ号の冒険(1982)」へのオマージュかな。
 作中、猫(シュレ猫)は勿論のこと、加速器の掃除係としてイタチも出てくる。この作者相変わらず小動物が好きらしい。表紙カバー絵が宇野亜喜良なのも嬉しい。


エイダ


お聖どん・アドベンチャー2024/07/16 01:09

□お聖どん・アドベンチャー(田辺聖子 1977)

 女流SF作家に関するSFマガジンの連載コラムに出ていたので読んでみた。
 ユーモア小説、エッセイで人気のあった田辺聖子(お聖さん)の、本人曰くSF落語を8編収めた短編集。といっても、古典落語をSF仕立てにしたものではなく、お聖さんと小松左京、筒井康隆、眉村 卓ら仲良しSF作家(実名で登場)が、言論統制で小説家の需要がなくなった世界を、職と食を求めてうろうろと徘徊するユーモアSFである。タイトルは映画「ポセイドン・アドベンチャー(1972)」のもじり。
 一番面白かったのは、小松と筒井がインチキ土偶や贋作土器を作って儲けようとする「古墳屋」。この中で眉村が3分間だけ過去に戻れるタイムマシンを発明し、現代と3分前の世界を行ったり来たりする無限ループに嵌まるのが可笑しい。
 笑って読んでいたが、筒井康隆を除けば、著者も含めて実名の登場人物はほとんど死んでしまったのだなあと、しみじみとした。


お聖どん・アドベンチャー
お聖どん・アドベンチャー


動物農場2024/07/04 16:03

□*絵物語* 動物農場(新訳版)
 (ジョージ・オーウェル/金原端人(訳)カンタン・グレパン(絵)2023(原著1945))

 ディストピア小説「1984(1949)」で名を遺したジョージ・オーウェルの、ロシア革命とソ連誕生を寓話化した作品。「動物農場」のタイトル通り、豚その他の家畜が主人公なので、最初はユーモラスに話が進むのだが、次第に、理想と自由が権力闘争と独裁に置き変わっていく暗黒劇となる。その様は、実はすべての組織の中で見ることが出来るものでもあり、だから結構怖い話である。
 実は、昔、英語の勉強のために原著で読もうとしたことがあるが、読み辛く数ページで辞めていた。今回はとても読みやすい訳と挿画のおかげでするすると読めた。
 も一回、原書に挑戦してみようかな?


Animal Farm


神々の遺品2024/07/01 18:04

□神々の遺品(今野 敏 2002(文庫))

 オカルト科学系ライターの殺人事件を、私立探偵が追うSF風味の推理小説、公安、米軍、KGB、それにバチカンのスパイが入り乱れる。惹句に曰く、「宇宙と人類の歴史を紐解く、超伝奇ミステリーの黄金傑作!」。
 日米双方の関係者から謎解きが進み、シュメール文化に遡る米国の極秘計画が炙り出される前半までは快調なのだが、肝心の謎の中身が月刊「ムー」の記事を切り張りしたようなものなので驚きが少ない。ために何故ライターが殺されたかもようわからず、後半はグダグダになって終わったのは残念。
 やはり、「幻魔大戦 平井和正/石森章太郎(1967)」はさすがに面白かった、あるいは、半村良(「産霊山秘録(1973)」)は本当に凄かったのだと、今更ながら思う。


神々の遺品