ポストさらりまんが柏日記

　雨の日は、近くの映画館で映画を見るのに限る。

　封切からだいぶ経った、アニメでもアイドルものでもない、字幕映画はがらがらで、ゆったりと楽しめた。

　一言でいえば、異国情緒あふれる旅行ミステリー、日本の温泉地巡りサスペンス劇場の原型である原作を、見事に豪華絢爛な映画に仕上げてあった。

　ただここで一つ大きな問題が生じる。あまりにも有名な何度も映画化された原作なだけに、観客の三分の一位は見る前から犯人を知っているのである。

　実際、僕も、見始めてから15分くらいで、昔TVで見た旧バージョンを思い出して犯人が分かってしまった。そうなると筋は読めてしまうので、後は落語や歌舞伎の古典のように、様式美や芸風を楽しむことになる。あえて原作とは犯人を変える手法もあるが、完成された名作の良さが損なわれかねない。

　無論、作る方もそんなことは百も承知で、今回はポアロの口髭の由来となるエピソードを加えて新味を出そうとしていたが、所詮トッピングである。

　ここは、もう一つのこの映画の魅力、自分も当時の金持ちになった気分で味わうバーチャルナイル川クルーズを存分に楽しむことにした。

　劇中、ソフィー・オコネドー演じる歌手が歌うブルースがとても良い、英国の女優というが、自分で唱っているとしたら大したものだ。