気まぐれスターダスト ― 2024/05/10 23:18
□気まぐれスターダスト(星 新一 2000)
日本SF界のパイオニアにして大偉人のショートショートの名手、星 新一の、既刊のアンソロジーよりは転げ落ちた(素晴らしい)星くずを集めた一冊。
一読して驚いたのは、このころのショートショートは意外と長いこと、文量的には立派な掌編である。処女作と思われる、初出がガリ版刷りの雑誌と書かれた「狐のためいき」が読めるのも嬉しい。なんとなく硬質で理詰めのイメージが強い星新一だが、ドジな狐が独白する本作はとても情緒的である。


大吉原展 ― 2024/05/10 23:21
□異様に目立っていた高橋由一、20回以上炎上した吉原
開催前から、吉原を「江戸アメイヂング」と讃えた惹句で炎上していた「大吉原展」@芸大美術館に行ってきた。炎上はむしろ人々の関心を集めたようで入りは盛況、女性客が多かった。コスプレ風の着物姿もいて、これはアニメ「鬼滅の刃(遊郭編)」の影響かも知れない。
展示のメインは、芸者をモデルにした菱川師宣や喜多川歌麿、鳥文斎栄之などの華やかな浮世絵、それらとともに吉原の町並みと花魁行列を再現した江戸風俗人形(TV人形劇「新八犬伝」で有名な辻村寿三郎作)も人気を呼んでいた。
しかし、個人的に強い印象を受けたのは、高橋由一が花魁を描いた日本最初期の油絵で、小品ながら、会場の目玉でもある歌麿の肉筆大作「吉原の花」をも圧倒する異様な迫力を発していた。北斎の娘、葛飾応為のレンブラントばりと称される光と闇の傑作「吉原格子先之図」も見られるかと期待したのだが、残念、これはなかった。
なお、会場で仕入れた豆知識であるが、吉原は20回以上も火事で炎上していた。放火も多く中には待遇改善を訴えた遊女によるものもあったという。主犯の遊女と雇い主はともに遠島の罪となったそうだ。

ナポリタン ― 2024/05/10 23:30
□芸大美術館のレストラン
「大吉原展」を観て、館内のレストランでナポリタンを食べて帰る。
いつも食べてる、レトルトを温めたものより美味しかった。

カーテンコール ― 2024/05/10 23:33
□カーテンコール 25 SHORT STORIES(筒井康隆 2023)
もはや最後の文豪となりつつある筒井康隆の最新の短編集。
25編すべて面白いが、しみじみと気になるのは「プレイバック」。
作者の書いた小説の主人公たちが次々と作者を訪ねてくるのだが、そのうち、星 新一、小松左京、平井和正、半村 良、光瀬龍、広瀬 正、大伴昌司と、故人となったSF仲間も押しかけてくる。その中に何故か存命の豊田有恒も入っていたというオチなのだが、その豊田有恒も本書の刊行後1ヶ月で亡くなっているのだ。
表紙のとり・みきの装画が嬉しい。

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