□気候工学入門 新たな温暖化対策ジオエンジニアリング(杉山 昌広 2011)
10年前の本だが、最新のIPCCの気候変動評価報告書を見ても、それほど技術開発が進んだ様子がなかったので、入門書としては今でも適当であろう。
僕が最初にジオエンジニアリングという言葉を見たのは、ペンタゴンの報告書として話題になった、2003年の「An Abrupt Climate Change Scenario and Its Implications for United States National Security」の中でだ。そこに、Explore geo-engineering options that control the climate.と書いてあったので、凄いこと考えると思ったのだ。
で、そのジオエンジニアリングというのは、勿論本書を読めば良いのだが、温暖化が進まないように、例えばエアロゾルを成層圏に散布して、日傘のように太陽光を跳ね返したりするのである。核戦争後の「核の冬」のようなもんである。
地球の環境を人為的に改造するので、ジオエンジニアリング(地球の工学)と言われる所以である。実はエアロゾルは、既に、ピナツボ火山の噴火のような自然現象からも、脱硫設備が不備な煙突からも出ていて、それらによる冷却効果は、負の温暖化ガスとしてIPCCの報告書でも計算されている。
ただ、それを意図的大々的にやろうとすると、何せ影響も副作用も全地球におよぶため、当然懸念や反対も多く、なかなか実証実験の段階には至っていない。
他にも、海水を巻き上げて洋上に反射率の高い雲を人工的に作る方法や大気中から直接CO2を吸収する化学プラント、海洋に鉄を散布してCO2を吸収する植物プランクトンを増やす方法などが提案されている。
世界各国の協力により、人為的なCO2排出が激減して温暖化が緩和できれば良いのだが、間に合わないときのために、このような技術が真面目に検討されている。歳をとると分かるのだが、2050年なんかあっというまに来るので、研究は怠らずに進めておいた方が良い。
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