文豪たちの妙な旅 ― 2026/01/17 23:50
□文豪たちの妙な旅(山前 譲編 2023(文庫))
9人の文豪たちの旅に関する短編を編んだアンソロジー。
「夜航船」 徳田秋聲
「天鵞絨」 石川啄木「温泉宿」 林芙美子
「島からの帰途」 田山花袋
「幻影の都市」 室生犀星
「二人の青木愛三郎」 宇野浩二
「エトランジェ」 堀辰雄
「虎狩」 中島敦
「猫町」 萩原朔太郎
中島敦の「虎狩」は、かの「山月記」に至る実体験を描いた創作秘話とも読める。
白眉は、やはり萩原朔太郎の「猫町」、日常の中にふと垣間見える異世界談の魅力は古びない。


STAP細胞 ― 2025/12/02 02:47
□STAP細胞に群がった悪いヤツら(小畑峰太郎 2014)
日本中を一時、歓喜の嵐に巻き込んだ(お手軽に作れる)万能細胞、STEP細胞の雑誌「ネーチャー」への掲載(2014)とその後の凋落、日本最大の研究のミスコンダクトをジャーナリストが追った記録。あれからもう10年以上たったのだなあ。
中心人物の小保方氏はともかく、彼女を取り巻いていた理研の錚々たる科学者が何故このブードゥーサイエンスを見抜けなかったのか、それが騒ぎが終わってからの僕の一番の関心事だった。
本書では、科学界と産業界、政界の悪しき馴れ合いや、巨大サイエンスそれ自体が巨額の権益を生む一大産業と化していることなど、事件を取り巻く背景が子細に分析されているが、「なぜ騙されたか」あるいは「何故だまし通せると思ったのか」という野次馬的好奇心は満たされなかった。
結局の処、人間は「見たいものしか見ない」ということであろうか?

図書館長GAZIN菊池 ― 2025/11/26 18:00
□図書館長GAZIN菊池の妄想のビートルズと日本文学(菊池雅人 2025)
仙台の図書館長が利用者に向けた講演を一冊にまとめた読書の勧め。
ビートルズなどのヒット曲とそれに触発された日本文学、あるいは逆に小説に触発された歌謡曲、はたまた大事件に想を得た文学作品と楽曲などが紹介されている。
ビートルズものの小説と言えば「ノルウェイの森(村上春樹)」が最も有名だが、タイトルが曲名(日本版)「ノルウェーの森」とは微妙に違うことや、松本清張作品を思わせる「天城越え(歌 石川さゆり))」、昭和史に残る3億円事件をTVドラマ化した「悪魔のようなあいつ」の主題歌「時の過ぎゆくままに(歌 沢田研二)」などが紹介されて、ちょっとしたトリビア集となっている。

いまこそガーシュイン ― 2025/11/18 15:07
□いまこそガーシュイン(中山七里 2023)
「このミステリーがすごい」大賞を受賞した「さよならドビュッシー(2010)」の作者による音楽ミステリー。第一次トランプ政権時を思わせるアメリカで、米国人ピアニスト エドワードとガーシュインのピアノデュオを奏でるスーパーピアニスト岬は、寸前に大統領暗殺を阻止する、というお話。
実は奇しくも最近、クラリネットとピアノや2台のピアノによるガーシュインの二重奏をコンサートで聴いたばかりなので、とても臨場感を持ってこの小説を楽しめた。

ジャパニーズ・スマイル ― 2025/11/14 23:08
□ジャパニーズ・スマイル(中島みゆき 1997(文庫版))
密かに水前寺清子の伝統を受け継ぐ人生の応援歌手と認めた(僕が)中島みゆき女史のエッセイ集。音楽のことは、ロサンゼルスはスタジオ代が安い(当時は)ということ以外はあんまり書いていなくて、では何がかいてあるかというとバンド旅ガラスの詠歌であった。
ファンの人は必読?

ザイム真理教と斗う! ― 2025/11/03 23:53
□ザイム真理教と斗う!
救民内閣構想 国民負担を減らし、日本を元気にする秘策
(森永卓郎 泉房穂 2024/11)
今年の1月に亡くなった経済ジャーナリスト森永卓郎と、前明石市長・現参議院議員泉房穂の対談集。ともに、財務省の進める過度の緊縮財政と増税の結果、国民負担率がほぼ5割にまでなった日本の現状を憂え、政治主導で国民の元気が出るように立て直すべきという。タイトル「ザイム真理教と『戦う』」の文字が『斗う』と、昔懐かしの全共闘立て看文字になっている、気合が入っているのである。
具体的な政策として、泉は明石市長時代の経験から、明治の廃藩置県に範を取った廃県置圏による行政の効率化を提唱するが、正直メリットが良く分からなかった。
ま、政治家は言葉よりは行動だから、今後の泉の動向を見てみたい。
ところで、森永は日本が極端に対米追従になったきっかけとして、「日航123便」墜落(1985)への自衛隊の関与を挙げているが、本当なのだろうか。

ザイム真理教 ― 2025/10/16 23:36
□ザイム真理教 それは信者8000万人の巨大カルト(森永卓郎 2023)
および、同マンガ版
死の前日までラジオ出演するなど、壮絶な闘病の末に1月に逝去した、経済ジャーナリスト森永卓郎のほぼ遺言に近い、憂国と反財務省の書。
財務省の財政均衡主義への固執を「カルト」と断じ、過度の緊縮財政と歯止めの効かない消費増税、年金保険料率の引き上げで日本は破滅すると警告する。
意外だったのは、森永が国債発行を財源とする財政出動「アベノミクス」を高く評価するとともに、安部首相の退陣に伴って政府の経済政策が再び財務省主導に戻ったことを深く憂えていることだ。安部が進めた国債発行の規模ではハイパーインフレの恐れはなく、10%への消費増税が無ければ日本経済は復調した筈と言う。
森永に言わせれば、財務相は東大卒のエリート集団だが、法学部卒なので経済は素人なのだそうだ。知らんかった。ちなみに森永自身は東大経済学部卒である。
さて、直に結論が出る新首相が組閣する新内閣は、どのような経済政策を取るのであろうか、これ以上の増税と社会負担増は勘弁してほしいと切に思う。
なお、同時に出版されたマンガ版も読んだが、むしろ文字版の方が分かり易かった。つまりは、分かり易くしようとすると、却って分かり難くなる類の話なのだ。

英語でちょっといい話 ― 2025/10/07 13:51
□英語でちょっといい話(アルクちょっといい話政策委員会編 2021)
「思わず最後まで読み通せるような、興味深い内容のリーディング教材」として語学教育社の「アルク」が編んだ、英語圏で読み継がれている51の小話。
何より良いことは、一話あたり数ページの分量なのですぐ読めること、対訳付きなので読み誤ることもない。つい、次々と読んでしまう。
中には、教科書に出てくるような心温まるも説教臭い話もあるが、元気付けられる成功淡や都市伝説めいた怪談もあり、飽きさせない。
日本人の活躍する「Momofuku Ando」や「Mr. Tofu」もある。米国での豆腐売込み当初は、「Tofu」という語感が「toes on their feet」を連想させるとして嫌われたとは知らなかった。僕が気に入ったのは、飼い主を守る勇敢な犬の「Chalrie the Heroic Dog」と、愛する妻のとても怖い秘密を描く「The Red Ribbon」。

ある行旅死亡人の物語 ― 2025/10/06 22:18
□ある行旅死亡人の物語(共同通信大阪社会部 武田惇志・伊藤亜衣 2022)
遊軍記者がふと見つけた官報の「行旅死亡人」記事から始まった、神戸のアパートで3500万円の現金とともに孤独死した老女「チヅコさん」の身元捜しの物語。
住民票もなく、大金とともに遺された星形のペンダントと暗号めいた数字に、スパイとすら疑われた死者の身元を2人の記者が執念で辿り、ついに、警察でも見つけられなかったチヅコさんの親族を広島で探り当てる。
何故、死者が年金や労災の受け取りを断ってまで身元を隠して暮らしていたのか、写真に残された男の正体など、いくつかの謎は残されたままだが、まずは故郷で無事納骨された死者の平安を祈ろう。

泣き童子 ― 2025/10/03 19:10
□泣き童子 三島屋変調百物語 参之続(宮部みゆき 2013)
快調な「三島屋変調百物語」の第三巻目、今回の版元は文芸春秋だ。一巻目が角川、2巻目が中央公論だったので、大所それぞれの顔を立てて出版しているように見える、それだけの人気作家なのだ。
収録されているのは次の6話。
・魂取の池
男女の仲を裂く意地悪な池の意地悪が吉と出て。
・くりから御殿
山津波で失った幼馴染に会える不思議な屋敷。
・泣き童子
悪人を見抜く幼子の魂が転生し。
・小雪舞う日の怪談語り
三島屋ゆかりの岡っ引きの親分が語る亡者の見舞い。
・まぐる笛
数十年に一度、山に現れ村を襲う怪獣をおさめる笛吹。
・節気顔
罪滅ぼしに顔を亡者に貸す不思議な商売。
一番恐ろしいのはやはり表題作の「泣き童子」、一番映像化してほしいのは江戸時代のゴジラ話のような「まぐる笛」でした。

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