インスマスの血脈2021/12/30 18:09

□インスマスの血脈(The Cthulhu Mythos Files)(夢枕獏ら 2013)

 かのラブクラフトのクトゥルフ神話体系に捧げたトリビュート短編集で、次の三篇が、本家「インスマスの影」の部分訳とともに収録されている。
 ・「海底新宮」夢枕獏(文)x寺田克也(絵)
 ・「海からの視線」樋口明雄
 ・「変貌羨望」黒史郎
 好みでいえば、御大夢枕獏は高尚に過ぎ、小説としての完成度は樋口明雄が高いが、クトゥルフ神話が持つ、パルプマガジン的な、泥臭い薄気味悪さを一番継承しているのは黒史郎と思った。ネタバレで書くと、青木ヶ原樹海を異界への通路とする設定は、「マタンゴ-最後の逆襲(吉村達也)」を思い出して懐かしく読めた。
 日本でも「魔界水滸伝(栗本薫)」をはじめ、多くの派生神話が生まれるほど人気のクトゥルフの神々であるが、なぜか、先駆者的な役割を果たしたダンセイニ卿の創作神話については、やや忘れられている感がある。
 こちらも、再評価してほしいものだ。


インスマスの血脈