クチュクチュバーン ― 2023/06/23 19:52
□クチュクチュバーン(吉村萬壱 2001)
しり上がり寿の奇天烈なカバーに惹かれて読んでみたら、それにおとらず驚天動地のSFだった。一冊に表題作ともう一つ中編「人間離れ」が収録されているが、共に初期の筒井康隆にも通ずる、スラプスティックなナンセンスSFで、破壊的なパワーが紙面でさく裂していた。
つまり、人類が破滅的な変異や脅威にさらされてなすすべもなく、人間どころかこの世のものであるのかさえ怪しい存在に、フリージャズの怒涛の渦のようなあるいは疾走するパラパラ漫画のような筆致に乗って、変容していく快感が売りである。
もちろんこれらのカオスには効果音が必要で、表再作は、そのタイトル通り「♪クチュクチュバーン♪」が、異世界宇宙からの侵入者に秘儀「直腸出し」もむなしく人類が蹂躙されていく「人間離れ」では、「♪スッカンスッカンスッカンスッカン♪」が富樫雅彦のドラムのように流れる。
犬人間、シマウマ男、巨女、鳥人間の大活躍を見よ。

コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://eastworld.asablo.jp/blog/2023/06/23/9596570/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。