TAP2023/06/13 18:24

□TAP (グレッグ・イーガン/山岸 真(訳) 2008)

 確率論的マルチバース冒険活劇「宇宙消失」のグレッグ・イーガンの奇想短編集。
 編まれているのは、1986年から1995年にかけて発表された作品で、当時の近未来(21世紀初頭)を舞台にしている。今(2023年)からは既に「追い越された未来」なのだが、映話やパッド型端末の常用とかの描写はそんなに古くさくない。電子的インプラントに至ってはまだこの小説の水準に達していない。

 収録作の僕の個人的なまとめは次の通り。
 「新口笛テスト」 耳と脳にこびりつくコマーシャルソングの秘密とは…
 僕は、坂本龍一が自伝的エッセイで書いていた、大手術の後にタケモトピアノのTVCM「ピアノ売ってちょーだい!」のメロディが脳内で延々とリフレインするせん妄に悩まされたという話を思い出した。そういうことが実際あるんだ。
 「視覚」 脳の怪我の後遺症で幽体離脱的な俯瞰視野になってしまった男は…
 「ユージーン」 究極のデザイナーベビーが未来(?)から両親に語りかけて来て…
 「悪魔の移住」 宿主を乗り換えながら巨大化する知恵を持った脳腫瘍…
 「散骨」 心ならずもシリアルキラーの模倣犯連鎖に加担していた写真家…
 「銀炎」 謎のパンデミックウィルスのベクターを追跡していた女研究者は…
 今読むと明らかに新型コロナを予言してるような。
 「自警団」 人々の悪夢が実体化した怪物に街の警護を依頼した結末は…
 古典的な悪魔との契約の変奏曲。
 「要塞」 環境難民を拒絶する隠れたエリート層の企てとは…
 作品の時代は2008年とされ、弁護士の失業を防ぐために業務への疑似知性の適用が厳しく制限されていて、昨今のAI/ChatGPT導入騒動が先取りされている。
 「森の奥」 脳内インプラントに憑りつかれ明晰になりすぎた男は…
 「TAP」 表題作のTAPは、昔学校の理科の時間に習ったアデノシン三リン酸のことかと思ったら、それはATPで何の関係もなかった。脳内インプラントのメモリー引き継ぎによる超進化の可能性は… というお話。
 全体的にバイオネタが多い。


TAP


花と蛇2023/06/13 19:31

□アメリカデイゴと言うらしい、
 ヤマカガシは毒があるのでちょっかいを出してはいけない。

 花と蛇と書くと、団鬼六原作、杉本彩主演の映画みたいなもんを期待する人もいるだろうが、そうではなくて、近所の公園に行ったら南国風の花が咲いていて、蛇もちょろちょろしていたという、単にそれだけの話である。


柏ふるさと公園
北柏ふるさと公園