日本脱出記2023/02/13 14:55

□日本脱出記(大杉 栄 2011(初出1923))

 大正の無政府主義者 大杉 栄が、ベルリンで開催される筈だった「国際アナキスト大会」出席のために密かに渡仏するも、ドイツへの入国がかなわず、メーデーでの演説を契機に身柄を拘束され、日本に強制送還されるまでを綴った冒険談。
 アナキストの密航といえどもお金(それもかなりの)は要るわけで、その算段を作家の有島武郎に頼ったり、出版社に前借したことまで書かれていておかしい。フランスに不法滞在中も、パリの便所事情などのエッセイを日本の出版社に渡している。街の娼婦との交流も楽し気に書いているが?である。
 フランスでは3週間のムショ暮らしを余儀なくされるのだが、格子の中でもワインと食事を楽しんでいるから心配するなと家族に手紙を送っている。
 結局、罪としては旅券法違反だけなので、無事に日本に送り返され、帰国後は同志が銀座で帰国歓迎会を開いているのだから、呑気な時代でもあったようだ、
 と、ほんわかに読んでいたら、帰国2ヶ月後に関東大震災に遭遇、弟の避難先を訪ねた帰路に憲兵に拘引され、パートナーの野枝ともども殺害されたという史実にぶち当たり、暗澹とする。
 大震災以後、日本は戦争の昭和へとひた走るので、今評判の「鬼滅の刃」の鬼とは軍国主義のことだったのかと思う。
 末尾に、大杉 栄の甥、大杉 豊による解説が付く。 


大杉 栄


ジュサブローさん2023/02/13 16:26

□玉梓が怨霊に震えた。

 NHK人形劇「新八犬伝」で有名な、人形作家の辻村寿三郎さんが5日に逝去されていた。おどろおどろしくも絢爛豪華なジュサブローさんの人形、特に物語のラスボスである「玉梓が怨霊」は子供心にも凄いインパクトであった。
 享年89歳、合掌。


白梅