亜玖夢博士のマインドサイエンス入門2022/02/14 12:49

□亜玖夢博士のマインドサイエンス入門(橘 玲 2010)

 読んではいないが、ベストセラー「お金持ちになれる黄金の羽の拾い方」を出した橘 玲のSF長編。
 「認知心理学」、「進化心理学」、「超心理学」、「洗脳」、「人工生命」の5つのエピソードに沿って、場末の人生相談所のような「亜玖夢研究所」から話が始まる。
 引きこもり男の社会復帰を助けたつもりが、いつのまにか人類の脳みそを支配する巨大カルトを産み出してしまい、カルト資本主義大国と化した日本は、世界を巻き込んでハチャメチャな奈落に雪崩れ込んでいく、というお話。
 マインドサイエンス入門と謳っているが、実は典型的なマッドサイエンス物語であり、先端脳科学の成果と著者お得意のお金儲けの方法論を結合させたハイブリッド経済ハードSFである。途中までは面白いのだが、ハードSFの部分とエンタメ部分の繋ぎが滑らかでないので、読後のカタルシスが不足しているのが惜しい。
 おそらく「未来の二つの顔(J.P.ホーガン 1979)」の最新バージョンを狙ったのであろうが、それならコメディ仕立てにしたのは誤算だったような気もする。
 また、狂言回しの「あたし」の、何かありそうと暗示される隠れた才能も結局見えないままであり、ほとんど説明なしで登場して謎のまま消滅する美男美女の超科学的ナノテクノロジーアンドロイドは意味不明であった。しかし、作者得意の金儲け理論は面白く、以前に読んだホリエモンの小説に似た匂いがした。
 マインドサイエンス入門とあるので、実践とか応用もあるのかと思ったが、今のところ続編はないようだ。仕方がない、今度は、著者の経済評論家としての出世作「お金持ちになれる・・・」を読んで、黄金の羽の拾い方を入門しようと思った。


マインドサイエンス入門


小曽根真ジャズナイト2022/02/14 20:07

□小曽根真 OZONE60 バレンタイン・ジャズナイト

 数年前に文京シビックセンターで聴いた、今は亡きチック・コリアと小曽根真の2台のピアノデュオが素晴らしかったので、今回、小曽根が上野の小ホールでソロコンサートをやると聞いて、また出かけて行った。
 前半は本当に一人でピアノを弾いて、もちろん大変きれいなタッチで完璧なリズムなのだけれど、記憶の中のチック・コリアとのデュオに比べると、どうもノリが悪いというか、失礼ながらスウィングしないのだ。ラグタイム風の自作曲でもそうなのだから、これはしまったと思ったものだ。
 ところが、後半に入って、米国留学から帰ったばかりの若手ベーシスト小川晋平を入れて2人で演じ始めると、見違えるように音が軽やかに飛び回り始めたので嬉しくてびっくりしてしまった。それは、ベースが入ったことで、左手が解放されて自由に動き回れたとかいう物理的な理由だけでは説明できないような変化だった。
 思うに、小曽根というピアニストは、誰かいると、その誰かとの音の交換が大好きで、途端にスイングし始めるタイプなのではなかろうか。
 相手がチック・コリアのような巨匠の場合は、真剣勝負のように発止と立ち向かうが、若手の場合でも、嬉々として胸を貸して相手の良さを引き出す、要は、誰かいれば良いみたいだ。
 といっても、プロミュージシャンとしてまさにデビューしたばかりという小川、さすが小曽根が見込んだだけあって素晴らしい腕であった。今後が楽しみである。スコット・ラファロのようになるといいな。
 さて、2人になって俄然生き生きし始めた巨匠のピアノは、プロコフィエフ(これのJAZZ版は初めて聞いた)で最高潮に達し、アンコールに、この日のお約束「マイ・ファニー・バレンタイン」を弾いてお洒落に締めくくったのであった。
 東京文化会館の小ホール、初めてだったが、とても音がきれいに響く会場だった。これでもう少し座席がゆったりしていれば言うことはない。


上野文化会館小ホール


夜のレストラン2022/02/14 20:11

□Green Park

 コロナ禍とあって早々と店を閉めているが、照明が美しい。


上野公園