上野駅公園口 ― 2021/05/08 23:00
□上野駅公園口(柳 美里 2014)
(ネタバレ有り)
昨年、全米図書賞を受賞したことによって、日本でも評判が逆輸入された形で話題になった本。上野には、展覧会やコンサートで訪れるので、気になって読んでみた。一言でいうと、上野のお山に住み着いて、鉄道自殺した初老のホームレスの、それでもまだ公園に漂っている、彷徨える魂のモノローグである。
東北から出稼ぎに来てまた田舎に戻って、しかし年老いて、愛する孫に迷惑をかけないようにと、死に場所を求めて再び上野に流れ着き、しかし、孫は東日本大震災の津波で攫われてしまうのだから、全く救いのない話だが、不思議と読後感は爽やかである。人生に対する諦念と愛情が感じられたからであろうか、僕が年取ったからであろうか。文章はとても上手く、一気に読んでしまった。
今日、主人公が最後の住まい(段ボールハウス)を構えた摺鉢山を聖地巡礼してみたが、オリンピック(どうなるのだろう?)に備えた公園口の整備工事の際に特別清掃されたのか、ブルーシートや段ボールの跡形も見当たらなかった。
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