折りたたみ北京2021/04/30 18:10

□折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー(ケン・リュウ編)

 中国系米国人の作家、ケン・リュウが編んで英訳した中国のSF短篇集の日本語訳。現代中国SFを本格的に米国に紹介した最初の一冊となり、「三体」のヒューゴ賞受賞と世界的なベストセラー化のきっかけを作った、今から見ると歴史的な短編集。
 三体の劉慈欣を含む7人の作家の13作品を収録してあり、編者の目論見通り、現代中国SFの網羅的かつ理想的な入門書となっている。
 僕が気に入ったのは、「鼠年(陳楸帆)」。「モロー博士の島」の伝統を正しく引き継ぐ改造獣人ホラー。心を操るミュータントネズミというアイデアは、山田正紀の「別の世界は可能かもしれない。」と共通している。
 ケン・リュウの解説にもあるが、収録された作品には、教条主義的な唯物史観など、我々が期待する中華人民共和国的な要素は皆無である。作家らの視点は、あくまでグローバル(マーケット)なのだ。


折りたたみ北京


テスラ2021/04/30 20:16

□テスラ エジソンが恐れた天才(マイケル・アルメレイダ監督 2020)

 テスラと言っても電気自動車の会社ではない。その会社の名の由来となった天才発明家二コラ・テスラの栄光と挫折の物語である。
 テスラは電気の作り方と流し方、つまり発電と送配電系統をめぐり、トーマス・エジソンと交直電流戦争を始める。天才と発明王の一騎討ちである。一騎討なのだが、テスラは実業家ウェスティングハウスと組んで勝利する(栄光)。
 今日、世界中の電気が交流系統で流れているのは、このおかげである。もっとも、太陽電池や、電気自動車の電池は直流なので、エジソン技術も健在である。もし常温超電導ケーブルが発明されれば、直流系統の復活も夢ではない?
 映画は思った以上に面白かった。エジソン陣営が交流に危険なイメージを与えるために交流の電気椅子を発明するという邪悪なエピソードも含めて、電流戦争を生き生きと描写するだけでなく、金融王モルガンやフランスから来た名花サラ・ベルナールも登場して、当時のアメリカの華やかな社交界も垣間見せる。
 けだし、19世紀末から20世紀初頭とは、アメリカが様々な技術開発を推し進めながら世界の大国に駆け上がった、まさにアメリカ文明の幕開けの時代だったのだ。
 中でも、電気工学は、現代文明を支えるアメリカの最も重要な発明品と言って間違いないと思うが、なぜか、エジソンもテスラもノーベル賞を授与されていない。眞に不思議である、村上春樹が芥川賞から落選しているようなものかもしれない。
 交流で大成功したテスラであったが、その後は無線通信の手柄をイタリアのマルコーニに奪われ、スポンサーにも見放されるなど、不運の生涯を閉じている(挫折)。
 ところで映画では、イーサン・ホーク演じるテスラが突然歌い出してびっくりする。これは、JAZZ映画でトランぺッター・歌手のチェット・ベイカー役を務めたホークの自慢の歌声を聴かせるためらしいが、意味不明な場面ではあった。
 また、テスラは交流を発明したのではなく、交流の利用法を発明したのだとわざわざ説明していた。それでは本来の交流の発明者とは誰なのであろうか? ネットを調べてもテスラの名前しか出て来ないのでよくわからんかった。
 ついでに言うと、敵役エジソンを演じているのが、ツイン・ピークスのクーパー捜査官で有名になったカイル・マクラクランなのも楽しい。

 
テスラ


マンボウ柏2021/04/30 23:22

□こまいぬブルワリー休業

 散歩で「柏ビール」の前を通りかかったら、5月11日まで休業と出ていた。
 そりゃそうだ、ブルワリー(ビール醸造所)で酒類の提供を停止させられたら、商売になる訳がない。


柏ビール