メガロポリス ― 2025/08/25 23:40
□メガロポリス(フランシス・コッポラ監督 2024)
かのコッポラ監督が私財170億円を投じて作り上げた、世界一金のかかった自主製作映画。話題と期待を集めたが、興行収入は21億円と大コケした。
近未来の又はパラレルワールドのニューヨークを思わせる、大都市ニューローマで覇権を争うキケロ市長と天才建築家カエサルを軸にした、「メガロポリス」興亡史である。登場人物の命名に象徴されるように、ローマ共和制史のパロディとも言える。
同時に、タイトルからは、都市を主人公にしたSF映画の古典「メトロポリス(フリッツ・ラング監督 1927)」へのオマージュであることが伺われる。ここでは、メトロポリスのロボット「マリア」に代わり、万能の新素材「メガロン」が登場するが地味である。
瞬間的な時間停止や豪華絢爛かつ退廃的なパーティーなど、面白い場面もあるのだが、同じコッポラ監督の、「地獄の黙示録(1979)」のようなスペクタクルも「ゴッドファーザー(1972)」のような骨太の因果もなく、一番の見せ場になるかと思われた人工衛星の落下もいつのまにか雲散霧消して伏線は回収されなかった。
綺麗な絵はあれどエンタメ成分は薄いので、ヒットしなかったのは分かる。つまりはゴジラの出ない怪獣映画、「裸のランチ(2019)」のように、こじんまりとマニア向けに作るべき映画であった。

二番目の悪者 ― 2025/08/20 23:26
□二番目の悪者(林 木林(作) 庄野ナホコ(絵) 2014(初版))
動物の国の王様の選挙に出た黄金のたてがみのライオンは、対立候補の良いライオンを、悪いうわさを流して貶め、まんまと王様になるが、勝手放題に散在した挙句、戦争を始め、大爆弾で国が灰燼に帰す。
廃墟の前で、黄金のたてがみのライオンを支持した動物たちは、聞いた話を善意で流しただけで、何も悪くない、悪いことはしていないとてんでに語るのであった。
奥付を見ると、初版以来12刷を重ねた2022年版であった。金色のライオンが誰かに似ているのもロングセラー絵本となった一因かも。

おそろし ― 2025/08/19 02:08
□おそろし 三島屋変調百物語 事始(宮部みゆき 2008)
宮部みゆきの「三島屋変調百物語」の始めの第一巻、五つの話が語られる。初代の聞き手は、田舎から訳あって江戸の三島屋に預けられた親戚の娘、おちか。
第一話、曼殊沙華の影から覗く不気味な顔
第二話、お化け屋敷に住み込んだ鍵屋の親子の運命
第三話 聞き手のおちかが話し手になり明かされる秘密
第四話 道ならぬ恋に殉じた女の魂が宿る魔鏡
と、世にも「おそろし」のおどろおどろしい話がこれでもかと続くのだが、
なんと!
巻末の第五話に至って、それまでのすべての話が絡み合い、RPGのラスボスとの対決もかくやと思わせる怒涛の大団円に雪崩れ込んでいく。そのストーリーテリングの巧みさに僕は見事に嵌まってしまって、もう、次の巻を紐解くのであった。

しをかくうま ― 2025/08/02 01:37
□しをかくうま(九段理江 2024)
(ネタバレ有り)
ネアンデルタールの末裔から競馬のアナウンサーが馬語を習う話、とても愉快だ。
子供の時に親しんだドリトル先生や、TVの「Mr.エド しゃべる馬(馬がしゃべる、そんな馬鹿な!)」を思い出した。

岸辺露伴/懺悔室 ― 2025/07/30 18:53
□岸辺露伴は動かない 懺悔室(渡辺一貴監督 高橋一生主演 2025)
「ジョジョの奇妙な冒険」の作者 荒木飛呂彦の派生マンガ「岸辺露伴は動かない」の映画化第2作。前回の舞台はルーブルで、今回はベネチアだ。いづれも中世から伝わる荘厳華麗な美の本場なので映像が萌える。
古い教会で偶然に、日本人富豪の懺悔を聞いてしまった異能の漫画家 岸辺露伴は、富豪とその娘にからむ奇怪な呪いに巻き込まれていく・・・というお話。
売り物のベネチアロケは美しく、中世の街並みと伝統あるマスカレード仮面の美しさが楽しめた。但し、露伴はジョジョではないので活劇はほとんどない。
しかし、人の心に刻まれた履歴が本のように読める主人公の超能力「Heaven's Door」とは・・・、全く、ネタに困った漫画家の切実な願望なのであろう。

JUNK WORLD ― 2025/07/23 16:27
□JUNK WORLD(堀 貴秀監督 2025)
ほぼ一人で作り上げた処女作の人形アニメ「JUNK HEAD(2017)」がファンタジア国際映画祭で受賞して一躍脚光を浴びた堀監督の、満を期して公開した第2作。
前作の成功で資金が確保できたらしく、スタッフ数も6人に増え、3Dプリンターやモーションキャプチャーなど最新技術も取り入れて、人形アニメの造形も垢抜け動きも滑らかになっていた。特撮ファン大好きな爆破シーンも惜しげなく使われていて豪華だ。今回は台詞もちゃんと入っている。
しかし、美術と技術が洗練された分、前作にあったおどろおどろしい手作り感が薄くなったのはやや残念。話も複雑になっていて、時間遡行と並行世界を組み合わせたアイデアは盛り込みすぎて少しがちゃがちゃしていた。
進化したのはキャラクター、ダークな人型キャラクターが増えて大活躍する、楽しい。この2作目が売れれば、いよいよ作者構想3部作の最終章が拝めるらしい、刮目して数年後を待とう。

猫の刻参り ― 2025/07/20 18:28
□猫の刻参り 三島屋変調百物語拾之続(宮部みゆき 2025)
なんでも書ける宮部みゆきの、江戸時代の怪談を聞き置く変調百物語の10巻目、四話が収められている。シリーズ全体では42話語られたことになるので、あと58話書かなくては終われない。
一話 可愛がっていた猫が猫神様になって夢を叶えてくれる
二話 河童の三平太が村を守ってくれる
三話 山の神様のお館で親子が幸いを授かる
四話 聞き手の富次郎が兄の命を助けるために悪魔?と取引をする
主人公(狂言回し) 富次郎の運命が気にかかる。

ガニメデ支配 ― 2025/07/07 17:53
□ガニメデ支配
(P・K・ディック&R・ネルスン/佐藤瀧雄(訳) 文庫本2014(原著は1967))
地球人が芋虫のようなガニメデ星人と幻想兵器で戦うエイリアン戦記。
ガニメデ侵略宇宙軍の司令官が地球の精神科医の理論に洗脳され、黒人ゲリラ部隊と白人強欲牧場主の意図せぬ野合により地球が救われる。日系の「非在の女人」も活躍する黙示録的な冒険活劇。普通に面白かった。
単子(モナド)と言うのが出てくる、もしや筒井康隆の「モナドの領域(2015)」にディックへのオマージュが込められているのではと思うと楽しい。
巻末の解説によれば、共著者ネルスンは、SFファンのアイコン、てっぺんに竹トンボのついた野球帽「プロペラ・ビーニー」の発明者として名高い。ということはドラえもんのタケコプターの祖先なのか、単なる偶然の一致か、さらなる研究が望まれる。

SFと空想の科学 ― 2025/07/01 18:57
□頭の中は壮大な実験室 SFと空想の科学(Newton 2025)
名著「SFを科学する(石原藤夫/福江 純 1987)」の最新版みたいなものを期待して読んだのだが、SF作品に沿った解説は少しだけで、大半は最新科学の絵解き本だったので(それはそれでよく出来ていたが)、やや肩透かしだった。
出来うればセンスオブワンダーをもう一振り。

MI ザファイナル・レコニング ― 2025/06/22 22:54
□ミッション:インポッシブル - ザファイナル・レコニング
(クリストファー・マッカリー監督 トム・クルーズ主演 2025)
ギネスのパラシュートスタントの記録を作ったトム・クルーズが、吹き替えなしで走ったり飛んだり潜ったりするスパイアクション映画。60代にして鍛え抜かれた腹筋を見せるために半裸にもなる。
悪のAI対人間と言う、本来能天気なヒーロー映画の筈が、奇しくもアメリカがイランの核施設をバンカーバスターで直接爆撃した直後の観劇だったので、全面核戦争勃発危機という映画の設定が絵空事と思えずリアルに怖かった。
映画の中の黒人女性大統領は悩みつつも、主人公イーサン・ハントに世界の命運を託すのだが、これが今の大統領だったら全く別の結末になったかも(汗)。
初めてIMAX(600円高)と言うので見た、画面はでかかった。

最近のコメント