グリーン・ニューディール2021/09/18 01:45

□グリーン・ニューディール -世界を動かすガバニング・アジェンダ
                              (明日香壽川 2021)

 たまには真面目な本も読んでみた。
 パリ協定では、世界の温暖化を緩和するために使えるカーボンバジェットの有限性が確認された。日本も、先日退陣を表明した菅首相が、2050年までにCO2ゼロエミッションを目標にすると宣言したが、口約束かもしれない。この本では、具体的にどうやって大量のCO2排出を減らしていくのかを提案している。
 僕自身は、2020年の気温の観測値で、既に産業革命以前から1.3度くらいは上昇しているように見えるので、パリ協定が努力目標とする1.5~2度未満で温暖化を抑えることは大変難しいと思う。
 しかし、著者(東北大学教授)は諦めない。今出来ることとして、化石エネルギーから太陽光発電への大胆なシフトを提案し、かつそれを契機に、EUを中心に進んでいる脱炭素の新しい潮流、グリーン・ニューディールに乗った経済成長が可能だと説く。
 全体に流れる著者の、未来に向けての強い希望の思いには感服する。
 実際、この本の刊行後に出された経済産業省の「発電コストの検証」と「エネルギー基本計画」の見直し案では、太陽光発電を将来の最安電源、主力電源として位置付けている。方向性は、本に書いてあった通りだ。
 ただし、太陽光発電ならびにそれとセットの蓄電池システムへの過度の集中には、エネルギー・セキュリティ上の懸念も覚える。本書には言及されていないが、近年の水害の増加からは、気候変動の緩和策と同時に、国土を守るための適応策の強化も待ったなしである。
 つまり、当たり前だが、この一冊で気候変動問題がすべて解決する訳ではない。昔誰かが言ったが、この問題にシンプルなたった一つの魔法の解などないのだ。
 願わくば、来たる総選挙では、与野党の候補者が、国際的な気候変動の緩和や国土を守るための適応策について、己が信じるエネルギー・環境政策を存分に語って、社会のコンセンサスに繋がる論戦をしてほしい。今のところ、論点は、コロナ禍対策一辺倒になりそうだが、日本も一応、昨年、国会で気候非常事態宣言を決議しているのだ。温暖化対策を無視してはいけない。


GreenNewDeal


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