味覚の冒険2020/10/08 18:39

□短編アンソロジー 味覚の冒険(集英社文庫編集部編 2019)

 次の14人の作家による、食をテーマにした掌編を編んだアンソロジー。
 嵐山光三郎、井上荒野、岡本かの子、川上弘美、椎名誠、清水義範、白石一郎、田中啓文、谷崎潤一郎、筒井康隆、中島らも、南条竹則、夢枕獏、吉行淳之介。
 古今の手練れぞろいとあって、皆、安心して楽しめる。SF畑からは、椎名、筒井(ただしあの問題作ではない)、夢枕が参戦、いづれも絶品である。
 しかし、僕の一押しは、谷崎の「美食倶楽部」だ。エログロ寸前を見事に耽美趣味でまとめた内容もさることながら、文体の現代的なのに驚いた。とても明治生まれの人が書いたものとは思えない、三島由紀夫よりも新しく感じる。村上春樹が知られていないアメリカの作家を訳したものと言われても信じてしまうくらいだ。
 やはり、この人、只者ではない。


味覚の冒険