レオナルド・ダヴィンチ2022/01/09 17:37

□レオナルド・ダヴィンチという神話(片桐頼継 2003)

 ダヴィンチは絵画技術に革命的な変化をもたらした天才画家であることは間違いないが、世に喧伝されるような万能な天才科学者ではなかったという評論本。
 確かに、ダヴィンチの法則とか、ダヴィンチ発明による機械というもので、今に伝わっているものは、実はない。有名な数々のメカニズムの素描にしても、必ずしも彼の独創ではなく、また空想的なスケッチを超えるものでもなかったようだ。
 しかし、壁画のような公的な絵画は「最後の晩餐」など数点に過ぎないにもかかわらず、存命中から多くの画家が彼の絵を模写していた事実が、彼の画家としての革新性と名声を裏付けている。例えば、かのラファエロはダヴィンチの弟子である。
 著者によれば、ダヴィンチ絵画の革新性は、その迫真性にあり、透視法と人間の複眼による立体視まで考慮したその描写は、今のCGによるバーチャルリアリティに匹敵する。「モナリザ」が不気味な印象を与えるのは真に迫りすぎているからだという。
 なるほど、僕は「モナリザ」が不気味なのは眉毛が無いからだと思っていたが、実は、CGの陥りやすい「不気味の谷」現象だったのだと妙に納得した。
 著者はまた、ダヴィンチが発明した、リアルな立体感を表すために顔の輪郭線などを絶妙にぼかす「スフマート」という手法が、後世には単なるソフトフォーカスとして広まったことを嘆いている。


レオナルド・ダヴィンチ


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