桃山展2020/11/10 19:36

□「桃山 天下人の100年」展(東京国立博物館)

 狩野永徳と長谷川等伯の大屏風を目玉に、桃山時代の美術に焦点を当てた展覧会を観てきた。一応事前予約制だが、平日の所為か、ふらりとトーハクに行っても問題なく入れた。中もコロナ禍の影響か、それとも後述する別の理由か、空いていてゆったりと名品を鑑賞できた。
 ともすると大名のご用絵描き工房で、大げさではあるが芸術性は低いというイメージの狩野派であるが、いやいや実物をみると大した造形であり、さすがその時代の主流と感心した。ともかく、うまい、うまい、上手い。
 対するライバルの等伯も素晴らしく、絢爛豪華な楓も描くが、圧巻だったのは巨大な水墨画の「松林図屏風」、元祖朦朧体というか、ダヴィンチも真っ青な空気遠近法の極致である。狩野派でも少々マイナーな山雪の困ったような顔のトラの絵も可愛い、背景はまるでカンディンスキーである。絵とコラボした伊達政宗の書もあって、まことに美的な字なので、とても驚いた。
 この展覧会、絵や茶道具などとともに、大名たちが愛した甲冑や刀剣も展示してあったが、美しくもギラリと光る人殺しの道具の魔性に、戦国時代の血煙の残り香を嗅いだ。死の匂いは、華やかで豪壮な屏風絵の裏にも潜んでおり、後の町民文化の頂点、琳派や浮世絵には見られないものである。どんなに美しくても桃山の本質は、武家の芸術なのだ。そういえば織部焼の創始者 古田重然も切腹させられている。 
 博物館を出ると、目の前には金色に輝く黄葉があった。
 それにしても拝観料2400円はちとお高い、年金暮らしには辛いのであった。


上野トーハク
上野トーハク


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