Fukushima 502020/03/11 20:05

□あのとき何が起きていたのか。

 3.11東北大震災の時に、福島第一原子力発電所(1F)で起きた、わが国最悪の原子力事故を、渡辺謙など豪華俳優陣で再現したドキュメンタリードラマ。津波により原子炉の冷却に必要な電源を喪失した1Fは、吉田所長(一人だけ実名で登場)以下のスタッフ決死の対応にもかかわらず炉心溶融と水蒸気爆発に至る。
 当時は想像するしかなかった事故時の炉内の挙動、冷却水喪失、炉心溶融、水素の発生と漏洩、そして水素爆発と圧力容器の破損に至る一連の過程が、映画ならではのCGを駆使してリアルに「見える化」されるのを期待したが、イメージ的な画像の範囲を超えていなかった。事故後9年間の過酷事故解析の成果をもっと反映してほしかったが、科学考証スタッフも明示されていない。
 事故への組織的対応についても、首相から原子力安全委員会委員長、東電社長、発電所長にいたるまで、全員が大声で怒鳴りあっているだけにしか見えず、俳優の力演も上滑りしていた。意思決定プロセスが見えてこないのだ。
 最後に、エンドロールに注目したが、協力に東京電力は出ていなかった。映画の中の東電マークも微妙に本物と変えていた。代わりに、復興庁協力が大きく出ていた。文化庁の助成金も得ている。
 再現ドラマとしては、色々残念な点もあるが、あの事故があったということを伝える映画として貴重。


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