半村版進化論2020/02/26 22:07

□虚空王の秘宝 上・下(半村 良 1994)

 上巻は、平凡なサラリーマンがひょんなことから、太古に飛来した巨大宇宙船を守る秘密結社に引きずり込まれ、国家権力の追跡を振り切って宇宙に飛び出していくという痛快な冒険談であった。
 しかし、舞台が宇宙に移り、高次の宇宙人の指導の元に進化を重ねるべく、異世界を巡っていく下巻は、筆致にリズムがなくなり、また、科学的?解説の部分も、何かの引き写しのように妙に硬くなり、全くセンスオブワンダーに欠けていた。はっきり言うと退屈で、終わり方もなんだか消化不良で冴えなかった。
 あとがきを読むと、雑誌連載で始まった本書は、途中に長い中断期間があったという。最初の熱量と筋の一貫性が維持できなかったようだ。狙いとしては、半村流の「幼年期の終り」、人類の宇宙的存在としての進化を描きたかったようだが、尻すぼみに終わった。同じ主題なら、作者得意の伝奇SF時代劇の「妖星伝」等のほうがはるかに面白い。


虚空王の秘宝