参考にしたくない本2020/02/12 00:00

□ホームレス作家(松井 計 2001)

 出版年を見ると、21世紀の最初の年だ。つまり作者にとっては、2001年ホームレスの旅だった訳だ。仮想戦記ものを書いていた小説家が、いろいろあって家賃滞納でアパートを追い出され、妻子を公的施設に預けて、自らはホームレスとしてファミレスで執筆を続けながら、再起を賭けて本書を脱稿するまでのドキュメンタリー。
 この種の放浪日記では、なんといっても、故吾妻ひでおの不朽の名作漫画「失踪日記(2005)」が有名だが、それに先立つ実録小説である。冬季の放浪生活における凍死の危機は、まさに命を懸けた体験記だ。
 意外だったのは、それなりに売れていた筆者のそれまでの年収が500万円と書かれていること、一冊書くと初版の印税が百万円入り、文庫版になるとまた百万円入るが、増刷されない限りはそれで終わりらしい。書けなくなったり売れなくなれば、注文と収入が途絶えることを考えれば、サラリーマンと比べても、小説家はそれほど魅力的な職業とは言えない。村上春樹のような一握りのスーパースターを除けば、普通の作家は、かつかつの生活みたいだ。
 本書は、筆者が本「ホームレス作家」の完全原稿をめでたく出版社に渡したところで終わるが、読者として気になるのは、その後の話である。
 松井 計の名前をネットで検索すると、今も社会派のドキュメンタリー作家として活躍していることが本人のSNS等からうかがえた。執筆中は、生き別れ状態であった愛娘も、タレントになっていた。
 良かった、良かった。
 面白くてためになるけど、参考にする羽目にはなりたくない本である。


公園のベンチ


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