怒涛の中華SF2020/01/11 02:44

□三体(劉 慈欣 2019)

 遅まきながら、今話題の世界的ベストセラー「三体」を読んだ。怒涛の中華SFだった。巻末の解説では、セーガン、クラーク、小松左京を合わせたようなファースト・コンタクトものと書いてあったが、まさにその通りで、三つの太陽の下、惑星滅亡の危機に瀕している宇宙人(三体人)が地球に攻めてくるという、どこか懐かしい感じの空想科学大小説だった。
 繰り返す災厄で文明が寸断されている筈の三体人が、次元を活用できるまでの超科学(そうとしかいえない)に到達できる訳がないとか、そこまでの超文明なら「三体」問題を解決または回避する方法を見つけている筈とか、侵略先の地球人に何故に親切に情報を垂れ流すのかなどなど、突っ込みどころ満載なのであるが、あまりに面白いので、怒涛の勢いで読んでしまった。SFの部分も、大胆な仮説どころか相当トンデル。これを科学しろと言われたら石原博士も困ってしまうだろう。
 本書には、時代背景として文化革命も登場するが、全体として中国固有の地域性は感じられず、むしろ、欧米の翻訳SFと共通の感触があった。つまりグローバル文学である、だから売れたのだ。あえて言えば、地球防衛軍を支える魅力的な悪徳警官の言動には、毛沢東のゲリラ戦思想の遠い木霊があるのかもしれない。
 三体なので、当然、本書は、三部作の最初の一巻である。今年と来年に、二巻と三巻の翻訳がでて完結する。それまで待てない!?
 ところで、今出ているSFマガジン60周年記念号では、とり・みきがマンガで「三体(サンタ)が街にやってくる」とパロっていた。そうか、お星さまになった吾妻ひでおの不条理日記を継ぐ者はとり・みきだったんだ。


三体