心に一人のナンシーを2018/04/19 03:55

□評伝 ナンシー関(横田増生 2012)

 ナンシー関という名前は知っていたし、週刊誌に、やや悪意のこもったようにも見える消しゴム版画の似顔絵が付いた、辛辣なTV評のコラムが連載されていたのも覚えているのだが、それがいつの間にかなくなってもう16年にもなるのだ。
 この評伝は、コラムニストとして人気絶頂のさなか、わずか39歳で心不全で急死した彼女の先駆的TV評論家としての生涯を、死後10年目に考察したものである。つまり、10年たっても彼女は評伝の対象として有意であり、古びていなかったのだ。
 僕が驚いたのは、彼女の初期の消しゴム版画が、まるで川上澄生のように可愛らしい明治な調子の丁稚さんの全体像だったこと、これが売れるにしたがって、あの独特のタレントの似顔絵(大首の消しゴム版画、科白付き)に収れんしていくのだ。
 まさに文画一体となったTV評論コラムニストの誕生であり、林真理子にあこがれた野心家の文学少女が、大好きなTVを手掛かりに、文筆家への階段を駆け上がっていく成功談として興味深く面白かった。
 しかし、肝心の彼女のコラムの内容を僕はほとんど覚えていない。コラムニストのことを書くのに、本人のコラムを読まずに、他人が書いた評伝だけを頼りとするのはいかにも失礼なので、次は、ナンシー関のコラム集を読もうと思うのであった。
 (いつも)心に一人のナンシーを。

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