JKエンコウSF!?2018/03/28 00:30

□ぼくらは都市を愛していた(神林長平 2012)

 「3.11を経てはじめて書き得た、懇親の長編登場!」と言う惹句に魅かれて読んだが、そんな直接的な技術文明論SFではなかった。
 筋だけ書けば、女子高生のエンコウ愛人を持つ元教師が、愛人を馬鹿にした(と元教師が感じた)情報軍の女性兵士を殺す話。つまり、表面の筋は、エンコウ愛人殺人事件であるが、バイオレンスやエロスなど、情動に訴える描写は全くなく、いつのまにか理解できない相手に対するコミュニケーションという、「雪風」以来の著者のテーマにぐるぐると引きずり込まれる。 
 SFとしては、ケータイ・ネットワークの普及の先にある、いわば「幼年期の終わり」的な人類進化の可能性が描かれているが、惜しいかな、書かれた時代背景の所為か、そのケータイはガラケー的なテキスト中心のイメージなので、今、現実にあるスマホ・ネットワークに照らすと、言わば「追い越された未来」になってしまっている。
 未来予想的な要素がどうしても入ってしまう、SFという小説形態の辛い処である。
 なお言わずもがなだが、主人公の綾田ミウ・カムイ姉弟の名字の綾田(アイデン)は、アイデンティティのことなんだろうな。

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