編集長VS漫画家2017/09/02 12:27

□漫画家‐この素晴らしき人たち(山本和夫)

 「週刊漫画サンデー」の元編集長が書いた漫画家21名との交友録。
 谷岡ヤスジの天才性、杉浦日向子のデビュー当時からの江戸指向、馬場のぼるのほのぼのさが読後感に残る。
 わたせせいぞうが保険会社のエリートサラリーマンだったとは知らなんだ。
 元編集長によると、漫画家は相手がヒラでも編集長でも同じ態度だが、劇画家は変わるそうだ。より組織人ということか?
 大友克洋らは、本書(1997年出版)には出てこない。この次の世代なんだな。

アニメの世界浸透と拡散2017/09/02 23:10

□オタク・イン・USA-愛と誤解のAnime輸入史
                         (パトリック・マシアス著、町山智浩編・訳)

 カリフォルニア州に生まれ、怪獣とアニメにあこがれた末に東京に在住しているアメリカ人のアニメ考を、東京で生まれ、カリフォルニアに住んでいる日本人が編集・翻訳した、オタクによるオタクのためのオタク史本(住所はいずれも2006年出版時)。
 Anime輸入史とあるが、原作マンガや怪獣映画・特撮ヒーローも扱われており、アメリカにおける日本のポップカルチャーの浸透と拡散の記録となっている。日本側から見れば、アメリカのオタク(NERD、GEEK)コミュニティを突破口にしたクールジャパンの売り込みの歴史とも言える。アニメではないが、失敗に終わった「ピンクレディー」のアメリカ進出も、この流れの中で紹介されている。
 扱われているのは、アトムよりもう少し後の時代、ガンダム、セーラームーン、うる星やつら、攻殻機動隊辺りまでだが、宮崎駿やポケモンなどのメジャーな題材は、さらりと流され、「やおい」マンガの米国上陸などが、オタク的に書き込んであるのが面白い。但し、宮崎アニメのオスカー受賞作を「もののけ姫」としているのは明らかな事実誤認(正しくは「千と千尋の神隠し」)で、著者のオタク力にやや疑問が生じる。
 小池一夫・小島剛夕の「子連れ狼」がマーベルコミックに与えた影響分析などは、日本人では気づきにくい視点として面白かった。高千穂遥の「ダーティ・ペア」もアメリマンガ(アメリカ版マンガ)になり、独自の進化を遂げたようである。
 本書を読むと、今やほとんどの日本のアニメ・漫画・劇画は、米国進出を果たしたように思えるが、何故か、かの過激なレディースコミックについての言及はなかった。著者の趣味に合わなかったのか、あるいは現在、上陸中なのか・・・。
 表紙見開口絵のアニメ・コンベンションに集う全米のコスプレイヤーの写真は、ある種天国のような悪夢のような・・・・それだけでも一見の価値あり。
 OTAKU UNITE!