Born to be Blue2017/06/03 23:28

□チェット・ベイカーの物語

 近所の名画座でやっていたので、ウェストコーストの伝説的なJAZZトランぺッター、チェット・ベイカーを描いた音楽映画を観てきた。
 主演のイーサン・ホークは入神の演技で、トランペットは勿論エアーなのだが、本当に吹いているように見える(聞こえる?)し、歌は、自ら歌っている。但し、ホークの声は、本物のベイカーの歌声よりはよほどキーが低いので、劇中、「女のような声で歌う」と揶揄される場面が活きてこないのは残念なことである。
 話は、麻薬の代金を払わなかったために、トランぺッターの命とも言うべき前歯をへし折られたベイカーが、超献身的な奥さんと仲間の助けを得て、JAZZの聖地「バードランド」で、あのマイルスをも唸らせるほどの名演でカムバックするまでの、愛と努力の物語である。
 でも、再起をかけた演奏の前に、極度の緊張に陥ったベイカーは、一度捨てたはずの麻薬を再び打ってしまうので、さわやかな感動作とはならない。これでは、まるで、名演するためには、ヤクが必要だといっているようなものである。
 さらに、JAZZ奏者の菊地成孔の解説では、実際のベイカーには、映画の中のようになんでも許して旦那を崇拝してくれる(男にとっての)理想の奥さんなどはいなかったとのことなので、映画の中の「愛」の部分は嘘である。  
 そんなわけで、なかなかにBlueでBitterな映画であった。
 なお、同時期に作られたJAZZ映画には、マイルス・デイヴィスがマフィア相手に拳銃をぶっ放すという、「MILES AHEAD」なる怪作もあるということなので。これも是非上映してもらうよう、映画館にリクエストをしようかな、と思うのであった。


Born to be Blue


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「手賀沼」の読み方は? ひらがなで答えてください。

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://eastworld.asablo.jp/blog/2017/06/03/8585991/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。