北千住「大はし」2014/08/18 23:56

□おっさんの聖地探訪

 神田の「みますや」と並ぶおっさんの聖地として名高い、北千住の「大はし」を初めて探訪した。かの居酒屋放浪記でも激賞されている、一度は行ってみたいあこがれの居酒屋である。
 思ったより小さな、しかし老舗の風格を備えた門構えの引き戸を開くと、店内は、入り口から想像したよりもはるかに広く、全席カウンター席の面持である。
 既に赤ら顔のおっさん達で満員で、丸椅子の上でしばし待った。しかし、回転も早いので、十分位で席に案内された。無論、酔客の隙間に潜り込むのである。
 まずは名物の肉とうふと牛にこみを頼む。旨い、とんがらしをたっぷりかけて、生ビールで流し込む。生野菜盛り合わせもサラダ代わりにパリパリと食べる。
 ぷはあと一息ついて、周りを見回すと癖のあるおっさんばかりだ。それも独り客が多い。隣と話すでもなく、正面を向き虚空を見つめながら、ぐいぐいと焼酎を飲んでいる。全員、孤独のグルメ、飲兵衛版みたいだ。名物と呼ばれる焼酎の梅割りは、一杯飲み干すのに命の危険を感じるほどのアルコール度だった。
 カウンターを埋め尽くすおっさん飲兵衛軍団は、ある種絵画的な、アンソールの絵のような情景なのだが、残念、店内に写真禁止の貼紙があったので紹介できない。
 怪しい下町の活力いっぱいの、おっさんの聖地酒場は、確かに一訪の価値がある北千住の居酒屋文化財であった。楽しい、ただし、客層のなせる業か、ものすごい喫煙率で、髪の毛までもうもうと匂いが染み込んだのには参ったよ。


北千住「大はし」